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看板経営.com

【まちブラ看板散策】上野編

めっきり寒くなり冬本番、師走である。看板にもシーズンというものがある。

東京の玄関口の一つである上野駅の広小路口を降りれば、正月用品を買い求める人込みが年の瀬の風物詩としても有名な「アメ横」ことアメヤ横丁だ。年末年始の連載物にふさわしい商店街付近を散策しつつ、看板を観察してみよう。

前回のまちブラ『池袋ラーメン激戦区編』はこちらから


アメ横は、東京都台東区のJR東日本・御徒町駅 – 上野駅間の山手線の高架橋西側と高架下の約500メートルを中心に約400店を有する商店街である。Wikipediaに書いてあった。
いわゆる観光名所の看板たちは街に暮らす人たちへ向けた看板とは違う、「外から来た人たち」へ向けて掲げられるため、普通の街のそれとは違う独特の趣がある。

オーニング自然保護区

高度経済成長期、日本に数多ある個人商店の軒先を雨風から守ったオーニングテント。そんな彼らも個人商店の減少と共にその姿を数を減らした……のだろうか?
ここアメ横はオーニングの群生地である。駅から一歩降りれば目に入るのは文字通り軒を連ねるオーニングの群れまた群れ。まるでオーニングのサファリパークである。
生き生きと暮らすオーニングたちと触れ合いたいならアメ横に来るべきだ。

経年と金箔と

男の顔は履歴書とはよく言ったものだが、お店の履歴書は看板だ。思い付きで適当なことを言ったが、中々上手いことを言っていると思う。名前やアピールポイントを書き連ねるばかりではなく、自然とそこにはこれまで歩んできた歴史の重みが滲み出るもの。
こちらの店舗の看板からは、ヴィンテージ風塗装や加工では再現しきれない本物の歴史の重みが滲み出ている。
経年によって当初にはなかった意図や意味合いが付加されていく様を愛でるのも、看板観察の醍醐味である。

まちかど緑地保全

人類はもともと森で暮らしていた。コンクリートジャングルの中にあっても人の目は自然と緑を探すもの。そんな本能に訴えた(であろう)看板がこちら。うっそうと茂る草むらから顔をのぞかせるチャンネル文字は、まるで周囲の様子をうかがう野生動物のよう。おのずと獲物を求める原始の狩猟本能を刺激し、ついフラフラと店舗に誘導されてしまうという寸法だ。たぶん。

軒先借りて母屋を演出

複合商業施設によくある“ひさし”と柱だけが据え付けられた「軒先店舗」である。
不思議なことに、このわずかに突き出たひさしだけで、建物全体が歴史ある宮殿のように見えては来ないだろうか。個人的にこういった店舗デザインは大好きだ。看板周囲のわずかな演出で、店舗どころか周囲の印象さえ激変させるという好例である。
なお、実際に上野御徒町で半世紀以上の歴史ある焼肉屋さんのようである。

経年ホワイトソース

経年によって退色したハンバーグの立体造形である。白いソースのもともとの色は何だったのだろうか。黄色いチーズハンバーグのチーズだったのか、あるいは赤いデミグラスソースだったのか。メインメニューを象った看板は、新メニューの開発や台頭によって付け替えられる可能性もある。あるいは、時間の経過によって自然に色が変わることを見越してこのハンバーグを取り付けたのか……と考えるのは邪推が過ぎるだろうか。

思いやり突っ張り鴨居

路面に店を露出できない地下店舗の唯一の「店の顔」とくれば、看板である。自然木の形状を活かした木彫看板は、老舗感、高級感、オーガニック感など様々な情報イメージを通行人へ伝えることができる。
が、ここで注目してほしいのは┐型に据えられた“梁”と“柱”である。
この木彫看板、ビルの躯体ではなく、突っ張り棒のように雑居ビルの入り口に嵌められた木製の梁と柱に固定されているのだ。
看板の取り付け一つをとっても、ビルの壁を傷つけないようにという思いやりの心が伝わってくるようだ。きっと心のこもったおもてなしをしてくるお店に違いない。

突き出しショーウインドウ

立体看板は看板の花形である。その視認性や訴求力は抜群であり、ビールジョッキの形とくれば文字を読まずとも伝えたいメッセージは明白だ。
しかし、この看板に限っては主役は下の“つまみ”であろう。平凡な突出し看板も板面を透明アクリルにすれば、空中ショーウィンドウに早変わり。あえて全てを見せず、半分をメディアで覆ったチラリズムがなんとも艶めかしいではないか

言葉はいらない

看板とはお店の顔であり、まさに店の看板である。当然そこには最も伝えたい情報を据えるもの、それが常識というものだ。しかし、この店舗では一番目立つ正面の大看板にあえて「絵」を持ってきた。まさに大胆不敵である。
「店の名前? メニューのウリ? わざわざ言葉にしなくても、伝わる心はあるはずだろう?」
そんな芸術家肌の店の主の心の声が聞こえてくるようだ。
その割には店舗のの下半分が主張過多だ。潔いやらよくないやら、芸術論では語りきれない市井の営みに思いを馳せるのも看板散策の醍醐味だ。

テトリス空中浮遊

こと街の景観という話題の切り口では悪者扱いされる看板たち。彼らは時には肩身も狭く、景観の隙間を埋めるテトリスのようにひっそりとビルの谷間に身を潜めてる。
そこへ来て、このピンク色のバーの袖看板。さすがに空間を無駄に……いや贅沢に使いすぎではないだろうか?
形そのものは建物の凹凸に寄り添うような慎ましかな出で立ちでありながら、色合いは真っ向から反するケミカルなマゼンダ。さらに本来ならなるべく目立たないように隠すであろう電線までも開けっ広げである。
本当にこの取り付け方で正解なのか? いや、こうして注目を集めている以上、やはり正解なのだ。たぶん。

ひとはどこを見ているのか

こちらも「軒先店舗」である。しかしその“軒先ぶり”が徹底している。
入居しているビルは、ガラス張り+鉄骨製の近代的かつ無機質なビル。対して路面に面したファサードを構成するのはわずかに柱と暖簾と切り文字の店名のみ(提灯や立て看板もあるけど)。ビルに対する店舗の構成要素は5%もあるまい。
しかし、このわずか5%から「老舗感」さえ感じないだろうか? 不思議な現象である。

スタイリッシュ巌窟王

鉱山坑道を思い起こさせる荒々しい岩肌に武骨な木製の梁。いっそ不愛想な木板で整えられた店構えは、まさに岩窟。ここまでくれば店の看板は荒々しい筆文字でもって厳めしさを完成させたいところ、というのが素人考え。店主は空中に浮かぶシャープでスタイリッシュな金属製の切り文字を掲げて見せた。
どうも上野という街はギャップの街でもあるような。
重厚な入り口に気取らない銀色の店名がなんとも涼やかだ。

3Dおもてなしジャパン

看板の一つの理想の形と言えば、見るひと全てに「どんなお店か」一目で伝えることではないだろうか。例え言葉がわからなくても何屋か伝わる。そう、立体造形ならね。
というわけで、外国人観光客も多い観光地ではこういった立体看板が大活躍するわけだが、ここではさらにイラストに面積を大きく割いて視覚的に「どんなお店か」を伝えている。エキゾチックかつユーモラスなイラストはいかにも外国人にウケがよさそうだ。
おそらく特注品であろう変形袖看板にさりげなく主張するマスコットキャラクターのワンポイントと見どころ満載だ。いかにも観光地の、さならが小さ遊園地のような店構えではないか。


やはり観光地の看板は見られることを意識していると感じる。特別な仕掛けのない看板でも何か緊張感とでもいうべきものが漂っている。

見られると看板は美しくなるということだろうか?

次は趣向を変えてナチュラルメイクな看板たちを見に行きたいと思う。

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