「これから伸びる会社」とは?

誰よりも経営者が行動し、新しい商材を取り入れる姿勢が肝要

年末に差し掛かる今回は、「これから伸びる会社」というテーマをもとに話を進めてみたい。

ここ数年で、大手広告代理店が屋外広告の新規案件から手を引き、クライアントも社内チームでマーケティング戦略を立てるなど、業界を取り巻く環境は様変わりした。広告代理店が撤退したことで、その下請けをメインとしてきたサイン製作会社は売り上げを落とすように。一方で、設計・デザインを得意にするサイン製作会社は、これをチャンスと捉えてクライアントへ以前にも増して直接営業をかけるようになった。簡潔に述べると、昨今の業界はこのような状況だ。

大手のサイン製作会社が進める真逆の2つの方法による拡大路線

現在、伸びている会社は、まず2つのスタイルに分けられる。1つ目は、M&Aなどで大胆に内製化へ投資し、設計・デザインから現場施工まで、自社の一貫体制を強化する方法だ。2つ目は正反対に、設計や営業に特化し、ほとんどの製作・施工を下請けに出すことで、自社の利益を確保する方法になる。この両極端な2つのどちらかで業績を伸ばす傾向にあると言える。

中小のサイン製作会社は互いに協力し合って競争力強化

とはいえ、どちらも資金力を持つ大手だからこそ取れる経営方針のため、3つ目の方法として昨今は中小のサイン製作会社が協力し合い、互いの強みを生かして業績を伸ばそうとする動きも加速している。営業はA社、設計はB社、製作はC社……と、自社が得意とする領域で互いをカバーし合うことで、大手と競い合うスタイルだ。しかし、今日まで成功を重ねたようなモデルケースは、現時点ではないように思う。

オーダーグッズ制作など看板とは全く異なる異業種も視野に

そして4つ目の方法は、看板とは全く異なる異業種で業績を伸ばすという方法だ。昨今の分かりやすい例で言えば、オーダーグッズ制作が挙げられる。これまで年商1億円だった会社が、グッズ関連で10億円にまで伸びたという話は、読者も少なからず見聞きしてきたのではないだろうか。まとめると、近年にサイン製作会社が売り上げを伸ばしていく方法としては、この4つが挙げられると思う。

複数社が協力し合うにはHD化や別法人の設立も念頭に

順番が前後するが、3つ目に挙げた中小企業が協力し合って仕事を取るというスタイルは、簡単ではないと私は考えている。ホールディングス化や別法人の設立などに踏み切れれば違うものの、それぞれが自社の代表者である以上、簡単に仲違いして連携がスムーズに進まなくなるケースは想像しやすい。

ただ、複数社が協力し合い共同購入することで、原価を抑えようとする視点は、大切だと強調したい。結局、1つ目に挙げた内製化へ注力する大手は、大量仕入れによって顧客が納得する品質や価格を実現している。これに対して、中小が1社単独で渡り合うには、人件費などを減らすような手となってしまうため、他社と連携し合う考えそのものは決して間違いではない。

大手の下請けに専念して会社を成長させるのは簡単ではない

続いて、2つ目に挙げたほとんどの製作・施工を下請けに回すスタイルだが、外注先に対して安さだけを追い求めれば、顧客からのクレーム発生率は当然上がる。その際に、責任を取らされるのは、恐らく外注先となるだろう。

極端に言えば、タダでやり直すなど下請けの利益は削れていくが、それによって元請けの利益は守られるという仕組みだ。そんな状況では、大手からの下請けで売り上げを立てるサイン製作会社は、会社を成長させるよりも、小さく回すことに専念せざるを得ない。話は逸れるが、このような業界の縮図から個人事業主も、依頼された現場施工にだけ出ていく一方になっている。つまり、昨今の業界は、自社が伸びる伸びないというよりも、利益を減らすような構図も垣間見られるように思う。

「これから伸びる」には他社と一線を画した独自性も必要

今回は、「これから伸びる会社」をテーマに4つの方法をまとめてきたが、最初に挙げた2つは大手が展開するもので、一極集中とまで言わないが業績も右肩上りで伸ばす。ここまで述べた通り、大手と渡り合うのは簡単ではない上、黙ってぶら下がるのもあまりお勧めできない。では、大手の拡大路線に追従するのが難しいサイン製作会社は、今後売り上げを伸ばすにはどうすべきか——。

それには、4つ目に挙げたオーダーグッズ制作のように、別の事業だったり、別の材料を取り入れたりして、自社オリジナルの商材を顧客へ提案していくのもひとつの手だ。良い例として、従業員5人以下の年商数億円規模で、オンリーワンのサインを武器に、大手一般企業と取り引きを重ねる製作会社も実在する。ただ、オンリーワンと言っても、何も大発明をする必要は全くない。国外で流行っている商材を持ち込んだり、業界外の商材をサインとして有効活用したりする発想で良いのだ。大切なのは、リスクを極端に恐れず、新しいものを取り入れ、積極的にPRしていく姿勢。「この商品と言えば、この会社」、そんな立ち位置を生み出していくことで、自ずと業績も伸ばしていけるように私は思う。

経営者の行動力は会社を伸ばす上で欠かせない要素

結びに、世界中を見渡しても、伸びている会社は共通してトップが一番動いている点を強調したい。社長が何もしないで、部下に全てを任せるのは、時代錯誤となってしまう。部下に委ねるほど、意思決定に時間を要するだけでなく、必要以上のプレッシャーも与える。トップが現場で新しい情報や技術を見て回るからこそ、その場で会社の命運を変える舵を切れるのだ。ビジネスで成功するか、しないかは「経営者の強い意思」が最も肝要ではないだろうか。

    文・髙木 蓮
    25年以上にわたり、サイン業界に身を置き、資機材メーカーのトップセールスマンとして活躍。日本を代表する製造業大手からの信頼も厚く、その人脈と知見をもとに、さまざまな新商品の開発にも携わる。

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