PVCメディアをはじめ、プラスチックは業界にとっても欠かせない材料だ。本レポートではプラスチックごみの削減とリサイクルのほか、バイオプラスチックなどへの置き換えを促進する、通称・プラスチック新法の概略をまとめる。従来のリサイクル法には前例のない、プラスチックという「素材」で対象をくくり、あらゆる業種に対応を求める新法のポイントを押さえたい。
サーキュラーエコノミーへの移行に向けて
2022年4月1日に施行された「プラスチック資源循環促進法(通称:プラスチック新法)」は、製品の設計から廃棄物の処理まで全てのプロセスで、包括的に資源循環していくための法律だ。
この背景には、海洋プラスチックごみの問題や、諸外国の廃棄物輸入規制強化、気候変動問題などへの対応が挙げられる。政府は、2018年に閣議決定した「循環型社会形成推進基本計画」に基づき、次世代に豊かな環境を引き継いでいくため、2019年5月には「プラスチック資源循環戦略」を策定。3R+リニューアブルの基本原則と、6つのマイルストーンを発表した。
3Rとリニューアブルの概略は次の通り。
- リデュース=ごみの減量
- リユース=再利用
- リサイクル=再資源化
- リニューアブル=再生可能
今回のプラスチック新法では、設計から処理までの一連の流れに関わりのある、全ての事業者や自治体が、「3R+リニューアブル」の取り組みを促進するための措置を定めた。とりわけ、従来のリサイクル法は家電などの製品に焦点を当て、それらの回収・リサイクルを義務付ける内容だったのに対し、新法では「素材」に着目し、製品や業種の枠に捉われない点が画期的と言われている。
新たに掲げられたリニューアブルは、プラスチックから再生素材や再生可能資源への置き換えを積極的に進めるものだ。そこには、これまでの大量生産と大量消費を繰り返す一方通行のリニアエコノミー(線型経済)から脱却し、新法の目標のひとつである「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への移行を目指すところが大きい。
環境省によると、サーキュラーエコノミーとは資源・製品価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止などを目指すものとしている。要するに、「そもそもごみを出さないよう設計する」のを意味する。
新法では、3R+リニューアブルによる資源循環の考えについて、次のようにまとめられている。
回避可能なプラスチックの使用は合理化(Reduce・Reuse)した上で、技術水準、安全性、機能性、経済的な状況等にも配慮しつつ、必要不可欠な使用については、より持続可能性が高まることを前提に再生可能性の観点から再生素材や再生可能資源(紙・バイオマスプラスチック等)に適切に切り替え(Renewable)、徹底したリサイクルを実施し(Recycle)、それが難しい場合には熱回収によるエネルギー利用を図ることで、プラスチックのライフサイクル全体を通じて資源循環を促進していく。
要約すると、プラスチックの不必要な使用は避け、どうしても欠かせない場合は再生可能な素材に置き換えていくと読み取れる。さらに、新法の主な措置内容は次の基本方針を策定し、資源循環の促進を総合的かつ計画的に推進するとしている。
- プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化に資する環境配慮設計
- ワンウェイプラスチックの使用の合理化
- プラスチック廃棄物の分別収集、自主回収、再資源化 等
個別の措置事項としては、「設計・製造」「販売・提供」「排出・回収・リサイクル」の3つに大きく分け、製造・提供・排出事業者、市区町村など、それぞれが取り組むべき内容をまとめている。次ページでは、特筆すべき具体的な措置を取り上げていく。