9. 中川ケミカル 中川 興一社長

「MATERIO」シリーズを使用しているほか、モルタル、鉄錆、杉など、各々の素材感を生かした空間デザインが特徴の「マテリオベース」。各分野のクリエイターを招いた展示会や交流会が開催される

デザインへの探求心で実現する 「人間空間に色をさす」

今後は、働き方改革のさらなる推進にも注力。時間外労働の是正には既に着手しており、業務効率化によって残業時間は大きく減少した。それだけでなく、社員間で仕事をカバーし合える関係性を構築し、誰でも気軽に休みやすい雰囲気づくりを徹底しているという。また、男性社員の育児休暇取得も積極的にサポート。実際に、半年や1年スパンで取得した社員も複数おり、社内でも当たり前の風潮になってきた。

そして、このように社風こそ大きく変えたものの、「カッティングシートの加工性をさらに高めたり、ラインアップの拡充を模索し続ける探求心は、これからも変わらずに持ち続けていきたいです」と興一氏は頷く。そのために、2007年からオープンしているショールームが、「CSデザインセンター」だ。ここでは、カッティングシートをはじめとする約1,100アイテムを展示。自由に手に取って確認できるほか、常駐のスタッフに相談すれば、デザインの要望に沿った素材の提供や、より専門的な施工方法もアドバイスしてくれるそうだ。

さらに、全国の美術系大学や学校を対象に、製品の基本知識と実技を学べるワークショップも開催している。開設時の責任者を務めた取締役の小沼訓子氏も「製品に関する困りごとを、一挙に解決できる施設になっています」と話す。

加えて2011年には、築30年以上のビルをリノベーションし、「MATERIO」シリーズの「鉄錆シート(※現在は販売を停止中)」をふんだんに使った複合施設「マテリオベース」の運用も開始。作家やアーティストを招いて作品展示会を開催したり、2階に設置されたバーカウンターに人を集めて交流会を開いたりと、さまざまな用途で利用されている。

将来的には、これらの施設もさらに活用させ、建築業界や内装・外装業界、その先の一般層にまで、サイン業界の枠組みを超えて、より広くカッティングシートの認知度を向上させていきたいと意気込む興一氏。併せて、まちの美観を彩る色彩の重要性や、優れた空間デザインを普及させるための活動にも取り組んでいきたいと力を込める。

もちろん、これと同じ目的で1982年から開催している同社主催のデザインアワード「CSデザイン賞」の歴史も、変わらず紡ぎ続けていくつもりだ。スマホの普及や、AIの進化、デジタルサイネージの台頭などで、最近では必要性が薄くなってきたと言われがちなサインにも、まだまだ潜在的な伸びしろはある。「そう信じて、私たちの強みであるデザインの部分から、業界と連携し合って盛り上げていきたいですね」と言葉を締めた。これからも、父から受け継いだあきらめない強い心を武器に、さまざまな方面から「『色の力』を使って人々の役に立つ」を体現していく。

東京本社外観。大阪、福岡にもそれぞれ営業所を保有し、全国規模で事業展開している

  • 株式会社 中川ケミカル
    代表取締役社長:中川興一
    本社所在地:東京都中央区東日本橋 2-1-6 岩田屋ビル4F
    創業:1975年
    社員数:約70名
    ホームページ:https://nakagawa.co.jp
  • ※ 「カッティングシート」は株式会社中川ケミカルの登録商標です
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