IT化は業界の標準見積もり作成にもつながる
最後に、参加者が5組に分かれてグループディスカッションを実施。約1時間、「働き方改革」をテーマに協議し合った後、各グループリーダーによるパネルディスカッションを行った。
司会者は内匠部長、パネラーはキャンバンの上野充博社長、ブンカ巧芸社の峯元伸明社長、昭和制作の赤嶺竜司社長、美はる社の岡山勝幸社長、タテイシ広美社の立石理恵部長に加え、特別ゲストとして総合報道の鈴木智之部長を迎えた。
パネルディスカッションの大要は次のとおり(敬称略)。
峯元「サイン業は手がけたものが、街に残る。自分たちの仕事に誇りを持てる業種だと考えている。とはいえ、いまの若い世代は休暇など福利厚生を最も重視する。そのようななか、彼らに業界へ来てもらうには、我々が変わらなくてはならないし、魅力も伝えていく必要がある」
赤嶺「毎日、社員の履歴書を5人分ほど見るようにし、それぞれの人生だったり、プライベートにも気を配るようにしている。そこから、仕事内容や給与などで問題が生じた際に、肯定的な解決の糸口を見つけられればと考えている」
岡山「カナダに赴任していた頃は、働いたら働いた分だけ、稼げるイメージで、家族との時間も非常に大事にする文化だと感じた。とはいえ、日本は日本の価値観を大切にすべきだと思う。働き方改革で、単純に休みが多くなることを皆が望んでいるわけではない。職人は育たなくなるし、どんどん働いて稼ぎたい人たちのやる気すら削いでしまう一面もある」
立石「中国に住んでいて感じたことは、働き方が多種多様という点。一律に、9時17時で仕事が終わりというわけでなく、子どもが寝静まった後の深夜に会議するケースもあった。現在も、中国企業と連携を取り合うこともあるが、何時に連絡しても彼らはだいたい3分以内に返事をくれる。このスピード感は凄いし、見習わなければならないと思う」
鈴木「働き方改革の取り組みについて統計を取ったところ、有給休暇の取得推進、高齢者の雇用継続、時短勤務と時間外労働の上限規制、定年延長と続いた。また、いまの若い世代を業界に迎え入れるには、サイン業の楽しさを伝えていく努力が欠かせないと思う」
内匠「ITで得られるメリットは3つあると思っている。業務効率化による時短、デジタル化での精度向上、そして指標を作成できる点である。この業界は原価が非常に見えにくく、なかなか利益率の向上が難しい。それを改善すべく、SignJOBZの開発・進化に取り組んできた」
赤嶺「SignJOBZによって、原価に対する意識が社内に広がった。ただ、サイン業は、その日に溶接して取り付けまでというように、完全に原価を把握しにくいところもある」
上野「元請けから下請けまで、業界全体が幸せになれるように考えを変えないと、この市場は盛り上がっていかない。そのためには、1つの指標となる標準的な見積もりがあるべき。東京と地方では金額も異なるが、何かしら一定のルールに則った単価表があれば、大きな前進となり得る」
内匠「今後も皆様のご意見を聞きながら、少しでも業界の利益率向上につながる仕組みを、これからもSignJOBZを通じて提供し続けていきたい」