前回からは、「産業廃棄物(産廃)」をテーマとしてきた。前編では産廃と事業系一般廃棄物の違いを説明し、それぞれの収集運搬の基本についてまとめた。中編となる今回は、産廃の収集運搬に関する制度を深掘りしてみたい。
産廃を収集運搬するには、原則として各都道府県知事から「産業廃棄物収集運搬業」の許可が必要になる。このことから、産廃の移動で県をまたぐ際には、積降をする両方の県で許可を持っていないと違反にあたると前回述べた。今回は、これら県ごとの許可を不要にする特例措置である、環境大臣認定の「広域認定制度」から説明したい。
これは、製品の製造・加工・販売をした事業者が、その製品が廃棄物となった際に、県をまたいでの広域的な廃棄物の減量や、高度な再生処理をできるようにする制度となっている。ただ、それぞれの製品ごとに認定を取得する必要がある点と、単純に他人の廃棄物を処理する目的では認可が得られない点には注意したい。実質的には、複数に及ぶ県の「産業廃棄物収集運搬業」許可を取得・維持していくのは難しいと言え、多くの県をまたぐほど、この「広域認定制度」を受けることが不可欠となるだろう。
次いで、ゴミの排出事業者が、自ら産廃を収集運搬する「自社運搬」について、簡単に触れたい。読者のなかには、「自社運搬」なら許可もいらず、専門業者に頼む必要もないのでは、と考える方もいるだろう。確かに自社運搬は、「産業廃棄物収集運搬業」の許可が不要になる。とはいえ、その手軽さに見合わないほど、さまざまなトラブルに巻き込まれる恐れがある。まず、自社運搬であっても、車両表示やマニフェストの携帯といった義務が厳しく定められている。そして、何よりも自社運搬の定義は法律上の解釈が難しい。例えば現場なら、元請け・下請けといった立場の違いで、そのゴミの排出事業者が誰なのか変わってしまう。このため、看板の解体などで自社運搬をしているつもりが、意図せず無許可での運搬となるリスクが付きまとう。つまりは、産廃の収集運搬で法令の遵守に努めるならば、必ずと言っていいほど許可申請が必要になるのだ。
続けて、産廃を収集運搬した後の話をしたい。例えば、看板を回収して再利用しようとする際、その形のまま、または簡単にカットしたり、バラしたりして組み直すのなら、何ら問題ない。しかし、溶かしたり、細かく砕いたりするなど、別の形状に変えて再利用するには、これも都道府県知事が許可する「産業廃棄物処分業」の申請が必要だ。
この「産業廃棄物処分業」は、産廃の中間処理と最終処分を行うための認可となっている。中間処理とは、リサイクルの前処理工程にあたり、産廃に対して物理的・科学的なエネルギーを加え、その状態を変化させることを指している。
次回の後編では、この中間処理およびに、その後の「リサイクル」を掘り下げ、産廃関連をテーマにした話のまとめとしたい。
文・髙木 蓮
20年以上にわたり、サイン業界に身を置き、資機材メーカーのトップセールスマンとして活躍。日本を代表する製造業大手からの信頼も厚く、その人脈と知見をもとに、さまざまな新商品の開発にも携わる。