建設業界の約7割が人手不足を実感。相次ぐインバウンド需要への対応で、賃金をアップする企業も増加傾向 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」

ただでさえ、2024年4月から時間外労働に上限規制を適用する「2024年問題」により、人手不足が懸念される建設業界。同様の課題に直面している物流、医療業界に絞って見てみると、3業種とも約7割が人手不足を実感していると回答した【図4】。今後もより一層の深刻化が予想されるなかで、既にこれだけ高い数値を出してしまうのは心配の種と言えそうだ。

【図4】建設/物流/医療業の人手不足割合(正社員)

では、数少ない人材を確保・定着させるためにはどうすれば良いのか。具体策として、「賃上げ」を検討する企業も少なくないそうだ。人手不足を感じている企業の「賃上げ実施見込み割合」は65.9%と、働き手に困っている経営者ほど、給料をアップさせている傾向が強いと分かった【図5】

【図5】2024 年度の賃上げ実施見込み割合(正社員)

とはいえ、中小企業が大半を占めるサイン業界で社員の満足する賃上げを実現するのは簡単ではない。他企業からも、「労働力不足は顕著であり、賃金を上げないと人員の確保は厳しい」(一般貨物自動車運送、茨城県)、「賃金を上げたいものの、材料値上げ分の価格転嫁もできない上に人件費分の価格アップを認めてくれない取引先もあり、なかなか難しい」(メッキ板等製品製造、山口県)、「大手を中心にベースアップが相次いでいる。しかし、中小企業には逆風」(鉄骨工事、茨城県)など、賃上げの実施に難しさを感じている声も多く聞かれている。

それでも、人手不足は放っておけば、業界の壊滅にもつながりかねない喫緊の課題だ。帝国データバンクの別調査によると、2023年の人手不足を要因とした倒産は260件に上り、過去最多を大幅に更新。昨年は、人手不足による企業経営への悪影響が顕著に見られた1年だった。今後は2024年問題にあえぐ業界のみならず、賃上げによる人材獲得競争はさらに激化が予測される。賃金アップはもとより、働き方改革やDX化による省人化も積極的に取り入れ、サイン業界全体でイメージアップを図っていかなければ、若者から見向きもされない業種に成り下がってしまうだろう。

原材料・エネルギーなどのコスト高騰も重くのしかかるなか、賃上げがどうしても難航してしまうという声は、理解できる。とはいえ、継続的な人材の定着を実現させるためには、避けられない要素だ。サイン業界は、この時代の荒波をどう乗り越えていくのか。人手不足解消に向けた、重要な局面に立たされている。

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