サインを肴に立ち返って【前編】

2025年の業界予測について触れた前回で30回目を迎えた本稿。今回はこの節目に当たり、サインを肴にという原点に立ち返り、年度末に行った編集部(三浦さん)との飲みの席を話題として取り上げてみたい。

三浦:前回は今年の業界予測をまとめてもらいましたが、実際に3カ月ほど走り出してご自身の予想と違いは感じますか?

髙木:そうですね、予想が当たった、外れたというよりも、インバウンドの勢いがもの凄いですよね。一方で内需不振は長期化していますし、そこにしっかり目を向けて今後のビジネスを考えていかないとかなと思います。

三浦:それでは、せっかくの機会ですし、現状の業界について個人的な意見を交わしませんか。いわゆる「待ちの看板屋」と言われて長く経ちますが、そこら辺に変化は感じますか?

髙木:やはり、仕事が来るのを待つという基本スタイルは昔から続くもので、簡単ではないですよね。家族経営で年商1億円ぐらいの規模ですと、世情に左右されにくく良くも悪くも「回しやすい」ので、きれいに収まりがちになります。

三浦:確かに。例えば利益が2,000万円あれば、それがそのまま家族年収になり、一般的には勝ち組ですよね。親から引き継いだ家業ならば、現状維持で満足するのは自然なのかもしれません。ですが、サイン市場は時間の進み具合が遅いからとはいえ、業界再編をいずれは迎えるのではないでしょうか。

髙木:そうですね。言わずもがな、自動車、電機、食品・飲料をはじめ、大きな市場から必ず淘汰と再編は起きており、それがサイン業界だけ例外とはならないでしょう。事実、私たちが意識していないだけで、既に業界内でもいち早く進んでいる領域はありますよ。

三浦:と言うと? IJPやLEDなどメーカー関連は周知ですが、サイン製作の領域でも生まれているのでしょうか。

髙木:例えばチャンネル文字です。以前は、看板屋が箱文字を内製するのは珍しくなかったものの、今はほとんどが外製になっていますよね。それこそ、チャンネル文字の製造元は、10社前後に限定されるのではないでしょうか。

三浦:なるほど。箱文字はメーカー品と捉えていましたが、そもそもは違いましたね。つまり、そういった再編がIJ出力や大型サインの領域でも同じように進んでいるという考えでしょうか?

髙木:実際にその動きは加速し、例えばターポリンの8割はスーパーワイド機を持つ大手数社に集中するなど、業界も領域ごとに淘汰は始まっています。そこに気付くか気付かないか、そんな現状ではないでしょうか。

三浦:現実として、家族経営企業のほとんどは支給品による施工が多いでしょうし、(再編で)いつもと違うものが届くようになったと気付くはずです。それでも、何でだろう? とならないのは個人的には不思議ですが……。

髙木:それは、利益が減らないからです。三浦さんもサラリーマン時代に、会社の家賃を気にしました? 自分のお金に関係の薄いことまで人は考えないですよ。

三浦:分かりやすい例えです(笑)。事実、自分たちで製作する領域が減っている以上、積算をどうのこうのと言う時代ではないのかもしれません。ただ、目の前の利益が減って今まさに悩んでいる会社は、変化に気付けているとも言える裏返しではないでしょうか。一番怖いのは、何も変わっていないと思い込んでしまい、気付いたら食えなくなった、だとしみじみ思いますね。それこそ、最近はマシンを買う必要がなくなって良かったと喜んでいるようでしたら、本当に怖いです。では、そういった点を踏まえ、業界の市場を大きくするには、どうすべきだと考えています?

髙木:大前提として、マーケットを決めるのは顧客であって、私たちではないです。製作側がいかに頑張るかは関係ないと思っています。私はお客さんが儲かっているから、儲けさせてもらっていると考えており、高付加価値、ローコスト、環境配慮などいずれを重視するかはお客さん次第ではないでしょうか。

三浦:言われてみれば、そこが逆転してしまっているケースも多いです。職人気質を守ろうとするばかりに、ウチはできません、ウチのやり方はこうですと頑なになりがちですね。言うは易く行うは難しく、品質と顧客の重視は似て非なるもので、日本が海外に後れを取る原因とも言われていますからね。

人手不足の昨今、自社のスタッフもお客さんと同じように大切にしないとですよね。

髙木:それとこれとは別でしょう(笑)。現在の経営者にとって、従業員の給与を上げていくという考えは至極当たり前です。次から次へと人が入って来ない以上、1人ひとりを大切に育て、それこそ中日ドラゴンズ時代の落合監督のように人材をフル活用していかないと立ち行かないですよ。

三浦:息子に継がせたいから育ったら出て行ってほしい、忙しくない時は辞めてくれないかな、そんな考えがよぎるようでは無論、淘汰される側に回ってしまう。現在は、人を入れるだけでなく、育て伸ばしていく資質が経営者には求められるということですね。

話を変えます。喫緊の変化として、今後はどのような素材ひいてはサインが求められていくでしょう?【つづく

    文・髙木 蓮
    25年以上にわたり、サイン業界に身を置き、資機材メーカーのトップセールスマンとして活躍。日本を代表する製造業大手からの信頼も厚く、その人脈と知見をもとに、さまざまな新商品の開発にも携わる。

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