仕事がなくても辞めたくなかった
スマイルネオンを立ち上げた2000年当時は、仲のいいお客さんからの依頼や、同業者からの仲介もあり、仕事は順調だった。しかし、2011年に大きな危機に直面した。3.11ー。“ネオン”というフレーズが大量に電力を消費するかのように連日報道された、東日本大震災だ。
「省エネが叫ばれ、街が暗くなりましした。社会的イメージから、もちろんネオンの仕事も激減しました」
風評のあおりを受けて、同業のネオン管職人たちが次々と廃業を選ぶ中、どうしても工房を続けたかった高橋さん。仕事がない時は、工房の目の前の山下ふ頭や大黒ふ頭での日雇いの仕事でしのぎ、夜にネオンを曲げる日々が続いた。仕事の依頼が震災前に戻るまで3、4年かかったという。
今では、1ヵ月に10〜20件ほどのオーダーをコンスタントにこなす。受注の大半は、08年に友人に作ってもらったホームページからの注文だという。
ショップオーナーはもちろん、企業や個人からの依頼も受け付けており、変わり種では結婚式のウエルカムボードに添えるネオンなども手がけるという。横浜の老舗ホテル「ホテルニューグランド」のネオンサインをはじめ、市内には高橋さんが命を吹き込んだネオンが点在している。
高橋さんが一番こだわりを持つのは“品質”だ。「ガスを入れる前に電気を通して中のゴミや水分を取り除き、電極を丈夫にする“焼き入れ”の工程をしっかりして、強度を上げるんです。他にも寿命を長くするために、余裕を持って変圧器を2個つけたりしています」。実際に工房入口に灯るネオンは19年一度も故障したことがないという。
一番嬉しいと感じる瞬間は? そんな質問に「ネオンが初めて光る瞬間、立ち会ったお客さんは必ず『ワーッ』っと感動してくれます。打ち合わせから一緒に作ったイメージが形になって光った瞬間ですね」とネオンのような柔らかい笑顔で答えた。