脱塩ビ・脱炭素・脱プラ、中

前回は脱塩ビについて、果たしてその取り組みは日本にとって最良の選択なのか、私の考えを述べさせてもらった。繰り返すが、塩ビはプラスチック系のサイン材料のなかでは最も炭素を排出しにくい。このため、脱炭素を進めるには、むしろ塩ビは推奨されるべきで、脱塩ビと脱炭素は決してイコールで結ばれない点を念頭に置いてほしい。

では、塩ビに課題は全くないのだろうか。大きくひとつ挙げられるのは、廃棄物を焼却した際の排熱を回収・利用する「サーマルリサイクル」はできるものの、固形燃料としてリサイクルする「RPF(Refuse Paper and Plastic Fuel)」には対応できない点だ。逆説的に言えば、企業として使用済み看板のRPFまで考えている姿勢を示さないと、脱塩ビへの取り組みは環境保全の一環だと主張できない、と私は思う。

しかし、業界の現状に目を向けると、塩ビを下地材に貼り付けたままゴミとし、埋め立て処分に回すという、最も環境に良くない廃棄方法がほとんどのように感じる。塩ビシートをアルミ複合板やスチレンボードに貼った状態では、リサイクルもリユースもできない。下地材から剥がすだけで、塩ビはサーマルリサイクルに回せるのに、こんな単純な一手間をおこたったまま、脱塩ビを支持していないだろうか。「脱塩ビ」、そのキーワードだけが一人歩きしている状況に疑問を抱いてならない。

ここからは脱炭素に触れていくが、その前に脱プラとの関係性をおさらいしていきたい。前提として、そもそもプラスチックを減らす目的とは、あくまでCO2排出量を削減し、地球温暖化を防ぐことにある。そして、深刻化する海洋プラスチックごみを減らし、海と生物を守るためでもある。言わずもがな、脱プラを進めていたら、脱炭素に逆行したでは元も子もない。そのようなケースは業界で少なくなく、例えば脱プラのサイン資材だとアピールされているものの、実は炭素の排出量が非常に多い、といった製品もある。脱プラと脱炭素も自動的に同義となるものではなく、購買者はそれを見極める目を持たないと、知らずとはいえ地球温暖化を加速させる一因になってしまうのだ。

一見、看板資材の回収も環境保全への取り組みに見えるものの、CO2排出量を考えると疑問を抱く。運搬にかかるCO2、リサイクルにかかるCO2、これらを考慮すると回収せずに分別して看板の設置場所近隣で処分するのが、最も脱炭素につながるのではないか。そもそも回収・運搬にあたっては、許可を受けるのが必須であり、産業廃棄物処理法を遵守するのが前提だ。

まとめると、脱塩ビ・脱炭素・脱プラ、または環境保全、そのどれをしたいかによって、本来は取り組むべき内容が全く異なるわけで、いずれも混合できるものではないと強調したい。国、ひいては世界が推進しているのは脱炭素であり、地球温暖化の抑制を最も重視している。このため、業界も脱炭素につながる看板資材を選んでいくべきだと、読者に私は投げかけたい。

なお、意味の混合という点では、脱炭素とカーボンニュートラルも同義ではない。なぜなら、CO2を出さないのと、CO2を出しても実質ゼロにするのとでは全く異なるからだ。次回は、業界におけるカーボンニュートラルの考え方について、所見を述べていく。

    文・髙木 蓮
    20年以上にわたり、サイン業界に身を置き、資機材メーカーのトップセールスマンとして活躍。日本を代表する製造業大手からの信頼も厚く、その人脈と知見をもとに、さまざまな新商品の開発にも携わる。

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