YouTubeすげえわ 〜今からでも遅くないSNS集客〜

「10〜20代の約半数がほぼテレビを見ない」。NHK放送文化研究所が2021年5月20日に発表し、各メディアを騒がせた調査結果だ。若い頃からスマホに親しむZ世代が、テレビ視聴ではなく、インターネットに趣味や娯楽の時間を費やしていくのは自然な流れ。
オンライン動画の筆頭格で、親会社のGoogleに次いで2番目にアクセス数の多いWebサイト「YouTube」。すでに世界中で浸透するなか、サイン業界でもビジネスツールとして活用できる芽はないのだろうか。一般的には、再生回数や登録者数を増やして広告収入を得るのが、YouTubeビジネス。だが、それ以外でも「ほぼ費用をかけずに済む」「続ける上でデメリットは少ない」という利点を生かせば、現在のネット社会で業界内企業もビジネスに結びつけていける可能性は高い。
本レポートでは、ここに活路を見出した三者三様のYouTuberに話を聞いた。

Twitterと連動した短編の手書き文字動画で
6万人を超えるフォロワーを獲得

大阪に拠点を置くサインズシュウの代表、上林修さんは下書きなしで、看板に文字を描ける日本で最も有名な手書き職人のひとり。

上林さんは2012年にYouTubeチャンネル「shu kanba」を開設し、2021年8月現在の登録者数は2.29万人。Twitterのフォロワー数は6.4万人と多くのファンを抱えている。

チャンネル開設のきっかけは、「どうして日本の看板に、丸ゴシックが多いのか」という研究をしている、ドイツ在住のフォントデザイナーから取材依頼のメールだった。当時、そのオファーが届いた手書き職人は上林さんを含めて6人。上林さんは「とにかくあやしいメールだと思った」と過去を振り返って笑う。大半がメールを無視するなか、結局は近隣の仲間と一緒に取材を引き受けると決めた。当初はメールで受け答えしていたものの、文章だけで伝えられる内容に限界を感じ、YouTubeに動画をアップロードしたのがはじまりだった。

この一方で、人に勧められるままに始めたTwitterは、「アカウントはあるもんやから、何か投稿せなあかんな」と愛用している筆の話を載せたところ、“いいね”が4件ついた。「4人も見に来る人おんやな! そしたらこの人らをびっくりさしたろ」と、今度は文字書きの動画をアップしてみる。すると、今度は100人から“いいね”がついた。自分が面白いと思って続けてきた文字書きに、多くの人が共感してくれて嬉しかったと、上林さんは少年のように目を細める。

その頃、毎朝の仕事にとりかかる前、文字をひとつ書くようにしていた。備忘録として、Twitterにその光景をタイムラプス動画で載せると、フォロワー数は倍々で増えていく。反響はさらなる反響を呼び、気付けばTwitterのフォロワー数も2万人に増加。一番驚いたのは上林さん本人だった。

タイムラプスを効果的に使い手書き文字の味わい深さを伝える

YouTubeに話を戻すと、取材用のチャンネルは、その後手付かずになっていた。放置していてはもったいないと感じたある日、ふと最初にアップした文字書きの動画を見返してみると、再生回数が跳ね上がっているのに気付く。「こんなんが好きやったら、こんなんも好きかな?」と、実際に看板書きをしている現場を倍速編集した動画を投稿すると、これも瞬く間に話題に。テレビ局からも取材の声がかかるようになった。

自分が楽しいと思うコンテンツでフォロワーも楽しんでいると思うと、もっと楽しませたくなり、次々と発信したくなると上林さんは破顔する。動画を作成していると、自身がまだ見習いだった頃、親方の書く文字を見て楽しんでいた頃を思い出し、新鮮な気持ちになれるそうだ。

YouTubeやTwitterへの投稿は、実際の業務にもつながっている。視聴者が仕事を発注してくれるケースもあり、メリットは感じてもデメリットはないときっぱり。動画を見てくれる人がもっと増えれば、手書き文字の認知も上がり、需要も増えれば後継者も育てやすい環境になると考える上林さん。近年は若者のレトロ回帰の風潮も感じているそう。あじわい深い手書き看板とその職人が増えるためにも、SNSでの活動は続けていきたいと頷く

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