顔料インクと前後処理液を同時印刷できるインクジェット捺染プリンター「FOREARTH」を発表 京セラ

京セラは5月10日、独自開発の顔料インクで柔らかな風合いと高い堅牢性を両立させた、インクジェット捺染プリンター「FOREARTH(フォレアス)」を開発したと発表した。

プリントサンプル

フォレアスは、顔料インクと前後処理液を同時に印刷できる新型プリントヘッドを搭載し、印刷と乾燥以外の工程を一切不要とするAll in One プリントシステム。従来の染料インクによるアナログ捺染に比べ、水使用量を99%削減することに成功したという。これまでの捺染に必要であった前後処理機やスチーマーなどの大規模な設備機器が不要になり、エネルギー消費量とCO2排出量の削減にも貢献する。

水の使用量を限りなくゼロにまで削減

さらに、プリント生地が硬くなるといった従来の顔料インクの課題を克服するとともに、ほとんど水を使わない、メディアを選ばない、色落ちしにくいなど顔料インクの特徴を引き出すことに特化した、プリントヘッドやシステムを開発。これにより、素材の種類に応じて機構やインクを変える必要もなくなり、ポリエステル、綿、シルク、ナイロンなど、多種多様な生地への高精細な印刷を実現する。アパレル関連からホームテキスタイルまで、幅広いカテゴリーでの活躍を見込む。

執行役員 経営推進本部長の濱野大洋氏は記者説明会の席上で、「顔料インクは染料インクに比べ、水で洗い流す必要がないため、環境負荷の低減に優れる点は良く知られている。一方で、プリント後の風合いがどうしても染料に劣るという課題も抱えていた。そこで我々は、顔料インク、前処理液、後処理液を独自に開発し、これらを全てインクジェットで飛ばすAll in Oneというコンセプトを掲げ、数年の歳月をかけて課題の解決に漕ぎ着けた。この商品が捺染業界のデジタル化の促進における起爆剤となり、地球環境保全の一役を担えることを願っている」と述べた。

生産設備の比較

なお、印刷にほぼ水を必要としないため、設置場所の制限もなく、かつ適地・適量生産が可能。印刷と乾燥のみというシンプルな工程で、デザインから生産までの工数を大幅に短縮する。生産設備も、非常に小さな面積で構築できる。

現在、デジタル捺染が占める割合は世界全体で10%と生産量は年間40億㎡ほど。しかし、環境負荷の低減が強く求められるなか、2030年には70億㎡まで拡大すると見込まれ、その動きは今後一層に加速していくと予測される。

フォレアスの主な仕様は次の通り。

  • プリントヘッド  :京セラ製循環インクジェットプリントヘッド
  • プリントヘッドの数:最大18本装備
  • インクの種類   :水性顔料インク
  • 色の数      :最大8色(CMYK+4色の特色)
  • インクタンク容量 :10L
  • 最大印刷幅    :1,800mm
  • 最大布幅     :1,850mm
  • 解像度      :600×600dpi
  • 印刷速度     :250㎡/h(標準モード)
  • サイズ      :約4,600×2,000×2,000mm(幅×奥行×高さ)
  • 重量       :約3,500kg
  • 発売日      :2023年秋頃 先行販売開始予定

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