続けて、今までの検索結果を反映してユーザーが興味を持った広告が自動で表示されるwebの特性を解説した。具体例として、楽譜の五線譜が書けるナカノ・ボールペン「ノリグラフ五線ペン」の動画を紹介。ボールペンを使用するようすをアップで撮影しただけの簡素な動画が20万再生を超え、Amazonの売り上げが7倍になったという。他事例としては、青森県の観光課が運営する「まるごと青森」で公開した「横山商店」の紹介動画が、1万再生を超えた例を披露。従来のテレビスポットに比べれば、決してクオリティが高くないこれらの動画の成功例から、「予算はかければかけるほどいいのか? というと、そうではない。すでに関係性ができているから、高くないクオリティでも十二分にユーザーの行動を喚起したのではないか」と仮説を唱えた。
次いで、「評価指標、予算、スケジュール」を決定して動画制作計画が生み出されるまでの流れをワークショップ形式で説明。「“地”と“図”が合っていれば、シンプルな映像・構成でもユーザーの行動を喚起する。テレビCMとweb動画の違いは、目的と掲載場所の多様性、テキストの存在と相互補助、ユーザー行動との関係性の近さである」とまとめ、動画を使用する目的と場所に応じた、Good Enough /必要にして十分なクオリティ基準を自分たちで設定し、クライアントに提案する必要があると説いた。
セミナーの後半では、Good Enoughな動画を使った実際のビジネスの成功例として「ハウツー動画」と「テレビショッピング動画」の実例を提示した。「ハウツー動画」では、「熱狂顧客戦略」(トライバルメディアハウス・高橋遼著)で提唱された“熱狂的推奨状態”へ顧客を誘導する戦略を紹介。「従来の製品の使用方法を説明するようなハウツー動画は、クレームに対応するようないわば“コスト”だったが、戦略によってインベスト/投資へ変わる」と語り、ユーザーに喜んでもらえる動画によって、見込み客を自社のファンとする戦略を示した。この成功例として、高速バス会社・WILLER TRAVELの公式Twitterアカウントで放映されている「バス停への行き方を紹介するハウツー動画」を披露した。