今回からは、「産業廃棄物(産廃)」にスポットを当て、話を進めていきたい。看板の製作現場では、完成した製品以外はゴミになる。撤去の際も、その看板を再利用、または別の製品として活用しない限り、全ての資材がゴミ扱いにあたる。そして、これらのゴミを収集運搬できるのは、許可を受けた専門業者に基本限られる。まず、この3点を念頭に入れて欲しい。
要するに、取り付ける看板以外の使用済み資材は、廃棄物処理法によって全てゴミとして適切な処理をしないといけない。この法令では、ゴミの排出事業者に対する義務が厳しく定められており、違反すると5年以下の懲役や1,000万円以下の罰金が課せられてしまう。
さて、会社から排出されるゴミの種類は、産廃と事業系一般廃棄物の2つに大きく分かれる。産廃は、その保管から収集運搬、処分まで、ゴミの排出事業者が責任を問われる。では、産廃と事業系一般廃棄物は、どのように分別されるのだろうか。
例えば、紙に関する事業活動で出る「紙くず」も産廃に該当する。法令によると、会社の事業活動から出た廃棄物のうち、産廃に含まれないゴミが、事業系一般廃棄物と定義されている。つまり、家庭ゴミの感覚なら単なる燃えるゴミも、会社の事業活動から出たゴミは、その多くが産廃としての処理を求められるわけだ。看板の製作現場だと、アクリルなどの廃プラスチック類に留まらず、大半のゴミが産廃扱いになろう。
これらのゴミは、いかに処理すべきか。昼食のコンビニ弁当やティッシュ箱など、就業中の従業員が個人的に出したゴミが中心となる事業系一般廃棄物は、市区町村で管理。その細かいルールは、各自治体で異なる。規定の許可を得たうえで、近隣のゴミ集積所に出したり、市区町村の処理施設へ自己搬入したり、とさまざま。ただし、他人のゴミを運べるのは、各自治体が管轄する「一般廃棄物収集運搬業」の許可を持つ専門業者のみ。厳しく罰せられるため、くれぐれも安易に「代理」運搬だけはしないで欲しい。
この一方、より慎重な処理が求められる産廃はどうだろうか。まず、管轄が市区町村から、都道府県(政令市)に変わる。産廃は、もちろん近隣の集積所に出せないため、中間処理場までの収集運搬が必須。この運搬作業を行うには、原則として都道府県知事から「産業廃棄物収集運搬業」の許可を得なければならない。つまり、収集運搬できるのは専門業者に限られる、と考えて大きく間違えではない。
そして、産廃の移動で県をまたぐ際は、ことさら注意が必要だ。都道府県ごとの管轄であるため、収集運搬の積降で県をまたぐには、両方の県で許可を持っていないと違反にあたる。また、運搬する産廃の種類ごとにも許可が要る。これらの申請は無料ではなく、新規で約8万円、5年ごとの更新で約7万円の手数料が、それぞれに発生する。関東一円などの広いエリアで仕事をこなすなら、一層のこと自社で「産業廃棄物収集運搬業」の許可を得るよりも、専門業者に委託するのを推奨したい。
今回は、産廃と事業系一般廃棄物の大きな区分を説明しながら、収集運搬の基本をまとめてみた。次回は、広域認定制度や自社運搬、またはリサイクルなどの定義を深掘りし、「回収」と「収集運搬」の関係性について、私見を述べたいと思う。
文・髙木 蓮
20年以上にわたり、サイン業界に身を置き、資機材メーカーのトップセールスマンとして活躍。日本を代表する製造業大手からの信頼も厚くv、その人脈と知見をもとに、さまざまな新商品の開発にも携わる。