【続】ファブリックサインが日本で広まらないワケ

前回は、本来の看板製作業とは何か、その原点について私の考えをまとめてみた。どの業種よりも早く新しいものへ果敢にチャレンジし、先行利益を獲得してきたのがサイン業界だったと。それが私たちの強みであったし、芸術や文化を生み出す看板製作業の本来の姿ではないか、と投げかけて話を結んだ。この姿勢は、今後の業界における発展性を考えた上でも、とても大切だと思うので今一度、強調したい。 

さて、今回からはガラケーという略称の広がりとともに、誰もが知るようになった言葉「ガラパゴス」にちなみ、業界における日本ならではの文化や、独自に発達した物事とは何かを考えてみたい。このガラパゴスシリーズの第1弾として、まずはファブリックサインについて考察していく。 

欧米では、数十年も前から普及が進み、今やサインディスプレイで欠かせないアイテムのひとつとなった、ファブリックサイン。それなのに、どうして日本での普及は加速度的に進まず、鈍化したままなのだろうか。それは、第一に日本人の性分として、ちょっとしたシワやたわみがあるとすぐ気になり、いとも簡単にクレームへと発展してしまうからだ。貼り施工ではなく、布にテンションをかけて張る以上、現状の既存製品ではそういった現象は多少なりとも生まれるわけで、ほんの少しの歪みも許されないのでは採用が広がらないのは当たり前になる。 

次に、大型の内照式ファブリックサインの一般的な厚みが現状100㎜と、そこそこのスペースを必要とする点だ。国土の違いもあり、海外に比べて日本の店舗は狭いため、100㎜も厚みを取られれば店内がより窮屈になってしまう。ましてや、既存店で100㎜厚のディスプレイスペースを確保しているケースは稀で、新規店ではないと設置しにくいと言える。 

続いて、ファブリックサインを内照式看板と同様に考える人が多いのも、原因のひとつに挙げられる。本来、ファブリックを内照にする理由は、黒色も締まって白色がとてもきれいに見えると、その意匠性を高めるためにある。そもそも、ほとんどが店内という明るい場所で掲出するのに、夜間で目立たせる内照式看板と同じく考えるのは違う。 

塩ビ、アルミ複合板、マーキングフィルム、塗料、紙など、サイン業界で白く見える色は多岐にわたり、それこそアンミカさんの「白は200色あんねん」は的を得ている。私は、外照式の塩ビサインに比べ、内照式のファブリックサインはとても白が映える点こそ、最大の強みだと思っている。この根拠として、米・Appleストアをはじめ、ハイブランドでは積極的に採用されている実績を強調したい。欧米に比べてなぜか、白へのこだわりが弱いのは日本のサイン業界における特徴のひとつなのだろうか。私たちの業界でも、真っ白が追及されるようになれば、ファブリックにとって大きな追い風になろう。 

そして、昇華転写やUVプリンター、ミシンを導入しなければならない、これらを稼働するためのスキルも身に付けなくてはならない、という生産する側の手間も伸び悩んでいる背景にあるだろう。しかし、エンドユーザー側からしてみれば、自分たちで取り付けや取り替えも簡単にできるようになる。業界にとっても省人化・省力化ができることは大きなメリットにつながる。つまり、顧客目線で見ても、決して日本でも広がっていく芽が全くないわけではない……。

ただし、そもそもの店舗の狭い敷地面積や、内照式看板との混合した考え方など、そういった問題がクリアされなければ、今後もファブリックサインの市場評価を高めるのは難しく、そのニーズを伸ばしていくのは難しいと言わざるを得ない。 

    文・髙木 蓮
    20年以上にわたり、サイン業界に身を置き、資機材メーカーのトップセールスマンとして活躍。日本を代表する製造業大手からの信頼も厚く、その人脈と知見をもとに、さまざまな新商品の開発にも携わる。

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