福祉を軸とした新規サービスの企画立案や開発などを行うヘラルボニーは4月、スクリーン印刷やデジタル印刷をはじめとした看板を手掛けるサイン製作会社・コバプロと提携し、「全日本仮囲いアートプロジェクト」を全国展開していくことを発表した。
同プロジェクトは、本来は建設中の建物を守る役割を持つ仮囲いを、広告やアートといった期間限定の「ミュージアム」として活用させていく取り組み。アーティストには地元の福祉施設に所属する人などを起用し、知的障がいのある芸術家の作品を建設現場の仮囲いへ転用するだけでなく、地域活性化にも寄与する。企業PRはもちろん、近隣住民が楽しめるさまざまな仕掛けを用意する、ヘラルボニーのメーン事業だ。従来は関東地方や岩手県を中心に活動していたが、今後は全国的に展開を広げていく構えだという。
「全日本仮囲いアートプロジェクト」の事業コンセプトは、「建築に、遊びを、学びを、彩りを。」。伝える×選ぶ×繋ぐの3つをキーワードに、仮囲いをひとつの媒体として楽しめる新たな付加価値を与える。第1弾として、今年3月に東京都渋谷区と連携。身体に障がいを持つ人と学生デザイナーが協力し合って作った文字フォントなどの素材を提供しているシブヤフォントの協力によりスタートし、来年11月まで渋谷区神南の仮囲いにアートが掲出されている。
岩手県では、建築会社が本プロジェクトを実施すると、「工事成績評定」が1~2点加点されるのだという。今後は、他県や他地域においても同様の条例が可決される可能性も期待されている。各地方の建築・サイン製作会社にとって、これからの仮囲いの有効活用は、他の制作会社と差別化が図れる重要なファクターとなっていくと言えるのかもしれない。
今回、ヘラルボニーと連携したコバプロは、創業50年以上にわたり屋内外・地域を問わず幅広い看板取り付けを手掛けてきたノウハウを用いて、「全日本仮囲いアートプロジェクト」に全面協力。アートの印刷から施工までの全工程を一括している。再剥離可能なシートを用いるため、仮囲いに汚れが残る心配もないほか、屋外広告物許可申請についても同社が行う。全国とのネットワークを活かして、北海道から沖縄まで全国各地への施工を可能とし、幅広い受注に対応可能な体制を整えている。