相手の課題に寄り添うなかでアイデアが生まれる
同社経営理念の根幹を示す一文「お客様の困りごとを解決する」。この姿勢は、保育園に対する提案営業が分かりやすい。
具体的に採用されたのが、自由な形状にカットしたアクリル板に特殊なミラーフィルムを貼り合わせた「割れない鏡」だったり、アルミ複合板にIJ出力物とホワイトボード用のラミネートを貼った「画鋲がいらないデザイン掲示板」などのアイデアツールだ。
看板屋なら誰しも扱う材料に一工夫を加えただけ。しかし、それであっても保育園の困りごとである「園児の危険回避」をクリアし、意匠性や機能性まで付帯させている。
「この人だったら何か面白いアイデアや情報が聞けると思えば、相手は会う時間を割いてくれるものです。会社や商材、ひいては営業マンに魅力がないと、アポすら取れなくなってしまいます」
売上追求よりも社員教育が顧客の満足度を高める
17年には本社・工場を増設。3階のほとんどを常設の研修ルームに充て、社内勉強会やメーカーを招いての講習会場などに活用している。社員教育に重きを置いている証左と言えよう。
社内の勉強会は、毎週水・金曜の夕方に15分ほど実施。講師は社員の持ち回り制で、テーマは自由だ。施工部隊の職人が当番の時は、アンカーボルトやコーキングの詳細解説を手書きで用意するという。その資料を見ると、適当に作ったものではなく、念入りに準備してきたことが伝わると佐野氏。上からの押し付けというより、そんな「社内風土」が無意識に築かれているのだ。
氏は力説する。「社員の成長と共に、仕事量も増やしていくと、お客さまの要望にもスムーズに応えていけるようになるのです。売上追求の前に、社員教育を最も大切しなくてはなりません」
少子高齢化による人手不足に対応する働き方改革も進める。サイン業に特化した業務管理システム・Sign JOBZ、点検業務などの現場管理を助けるアプリ・SIGN MANは、すでに導入済み。また、社内共通で午前10〜11時半は自身の仕事に集中し、社内の報連相は前後の時間で済ますよう取り決めるなど、「業務集中時間」も採用している。業務内容は、社員のスキル別に3段階に分けて、それぞれのレベルに合わせて仕事を割り振っている。これにより、新入社員が難しい仕事を抱えたり、熟練スタッフが単純作業に追われたりしない体制とした。
佐野氏をよく知る業界の社長らに聞くと、「お酒の席では、いの一番に社員の話。成長したエピソードを嬉しそうに話してくれます」と口を揃える。ソリューション営業というキーワードすら馴染みのなかった23年前から、「お客様の困りごとを解決する」姿勢を最も大切にしてきた氏。そんな彼だからこそ、人一倍に社員の抱える悩みや不安には真摯に向き合ってきた。スタッフの成長を自分のことのように熱く語る姿には、誰しも愛らしさを覚える。
- 有限会社 ケー・エス・ピー
代表取締役:佐野 浩司
本社所在地:愛知県名古屋市守山区新守山2108
創業:1996年
社員数:24名(2019年9月現在)