電通は3月11日、国内の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2019年 日本の広告費」を発表。依然好調の「インターネット広告費」が、6年連続の2桁成長で初めて「テレビメディア広告費」を抜き、2兆円越えを達成する結果となった。
レポートによると、2019年の総広告費は、6兆9,381億円。前回と比べ、大幅な増加となっているが、これは急速に成長し続ける広告市場に合わせ、今回から新たな項目を追加したためだ。従来の推定方法では、6兆6,514億円。前年比101.9%となり、8年連続のプラス成長となった。
今回から新たに追加された項目は、生活家電や雑貨、書籍、衣類、事務用品などの物品販売を行うWebサイトを対象とした「物販系ECプラットフォーム広告費」。そのほか、「プロモーションメディア広告費」の内訳である「表示・映像ほか」に、イベント時の販促キャンペーン、ポップアップストア、スポーツイベントなどの製作費を追加し、新たに「イベント・展示・映像ほか」へと名称を変更している。発展著しいWeb通販関連と、広告業界が取り扱うイベント領域を拡張した形だ。
不透明な世界経済や相次ぐ自然災害、消費税率変更に伴う個人消費の減退、インバウンド消費など厳しい風向きのなか、前年に引き続き成長を続ける「インターネット広告費」やイベント関連が総広告費全体を押し上げ、市場をけん引する結果となった。
特に「インターネット広告費」は、ついに「テレビメディア広告費」を抑え、初めて2兆円を突破(前年比119.7%)。大型プラットフォーマーの堅調な伸びや、新設項目の「物販系ECプラットフォーム広告費」がさらに後押しした結果と言えるだろう。ITやAI、IoTといった技術がさらに浸透し、デジタルを起点にした既存メディアとの統合ソリューションも進化。広告業界のさらなる転換年となった。なお、新設項目を除外した前年同様の推定方法の場合でも、前年比113.6%の1兆9,984億円を達成している。
媒体別に見ると「マスコミ四媒体広告費」は2兆6,094億円と5年連続の減少。「新聞広告費」「雑誌広告費」「ラジオ広告費」「テレビメディア広告費」はすべて前年割れとなっている。
また、「プロモーションメディア広告費」は2兆2,239億円。新設した「イベント・展示・映像ほか」が前年比158.4%を達成し、前年割れを防いでいる。前年同様の推定方法の場合は、2兆436億円(前年比98.8%)。
さらに屋外広告に絞ると、3,219億円(前年比100.6%)とほぼ横ばいだが、屋外ビジョンは増加傾向。LEDを活用した看板は前年に続き増えており、アナログから、デジタルサイネージやビジョンへのシフトが顕著となっているとわかる。
広告需要の高かったエリアは、新設の短期看板が多数登場した東京・青山、原宿、渋谷エリア。特に渋谷は、外資系企業の広告需要が高かったという。
また商業施設メディアも、新規オープンした施設のプロモーション展開など、首都圏を中心に堅調な推移を見せた。
同様に交通広告も、2,062億円(前年比101.8%)とほぼ横ばい。鉄道関連は、中づり、まど上、ドア横、駅ばりなどの紙媒体の落ち込みが目立った。その半面、その分をデジタルサイネージでカバーするという前年と変わらない傾向も見られた。
昨年と比較して大きな変化は、車内デジタルサイネージの需要増加が挙げられる。特に顕著なのはタクシー広告だ。新規参入もあり、前年より飛躍的に市場が拡大している。首都圏を中心に、地方にも普及。BtoB広告が多いものの、BtoC広告も増加傾向にあるようだ。
このほか、天気、気温、時間、位置情報などの外部データと連携したOOH広告「ダイナミック・デジタルOOH」を利用したサイネージの展開が、前年に引き続き話題を集めた。
折込広告やDM、フリーペーパーは、全て前年割れと厳しい結果になった。要因としては、インターネット広告へのシフト、消費税率変更の影響、印刷用紙の高騰があげられる。
しかし、インターネット広告で取り込めない顧客を、紙で取り込もうとする方法は伸長を見せている。特にECサイトの拡大とともに、紙のDMを顧客へ送付、購買などへつなげる企画は顕著な増加だった。
POP関連は、1,970億円(前年比98.5%)と微減にとどまった。AIロボットや次世代サイネージの活用など、新しいタイプの店舗が増えた1年。顧客体験・省人省力化を主軸に、店舗の新しい価値を求める動きが見られ、新たな店頭演出として、最新デジタルツールも数多く登場した。