京都伝統産業ミュージアムは3月14日、早稲田大学創造理工学研究科経営システム工学菱山研究室のグループとAIの研究を行うVBIPジャパンが共同開発した「投扇興AR体験アプリ」の展示を開始した。同施設は、京都に古くから伝わる茶道や華道、能、狂言をはじめとした独自の文化をさまざまな形で紹介する展示施設。今回、同日からのリニューアルオープンに合わせて、ARアプリの導入を決めた。
投扇興(とうせんきょう)はもともと古くから京都で体験できる伝統的な遊びである。枕と呼ばれる大の上に立てられた蝶に向かって扇を投げ、投げた後にできた銘と呼ばれる形に応じて採点がつく。
いくつかの高価な工芸品と複雑なルールを使用するため、本来であれば体験するハードルが高い遊びと言えるだろう。しかし、「投扇興AR体験アプリ」では、ARによって空間上に必要な道具を出現させられるため、手軽に投扇興を体験できる。ARは一般的に拡張現実と訳され、現実の景色に視覚情報を重ねて表示し、目の前にある現実を仮想的に拡張できるというものだ。
京都伝統産業ミュージアムは近年伝統産業の振興に力を入れているという。今回のリニューアルでもその方針は変わらず先端技術と伝統技術の融合で開発されたARアプリを紹介し、伝統産業ファンの客層拡大も狙いのひとつなのだという。
そのほか、伝統産業工芸品である京扇子を再現する「京扇子アプリ」も併設。ARによって通常は手に取って見れない貴重な扇子の表面や精細部分を拡大表示させながら鑑賞できる。
伝統産業と最先端のAR技術を融合させた展示は、特に若い世代をターゲットに捉えており、興味を抱くきっかけになるのはもちろん、古き良き京都文化のさらなる継承が期待される。