専門分野の独立事業化で荒波に負けない企業をつくる
同社が業容をここまで拡大できた要因とは何か。尋ねると、意外な答えが返ってきた。「特別な施策は何もありません。ただ、無駄を省こう、という意識は、従業員全員に徹底しています」。
例えば、施工でひとつのミスが発覚すれば作り直しになる。現場に重要な部品を忘れたら、往復の交通費が無駄になる。それはそのまま、純利益から引かれる損失となる。
「今の時代、会社を黒字で維持し続けるのは簡単ではありません。限られた時間のなかで、どれだけ効率良く働き、利益を出せるかが勝負です」。だからこそ、売り上げだけでなく、損益をしっかり意識できる社員を育てる必要があるのだと、中山氏は言い切る。
そんな同社も、今年はコロナ禍で難しい舵取りが求められている。世間ではリモートワークが推進され、人に会わない営業活動も一般化しつつある。しかし中山氏は、「私はこれまでの困難も、人と直接会って話しながらヒントを得て、打開してきました。直接のコミュニケーションに勝るものはないと信じ、これからも大切にしていきたいです」と、冷静な姿勢を崩さない。
では、どうやってこの難局を乗り越えていくのか。今後はより一層、自社の強みを的確にアピールしていきたいと力を込める。加工や塗装など、各分野を部署ごとに分け、それぞれの独立事業化を目指しているという。より専門性に特化させ、時代の荒波のなかでそのつど発生するニーズに合わせて、柔軟にシフトチェンジしていくためだ。
「今回のコロナ禍で、主業務だけに頼っていると、いつか足元をすくわれると学びました。対応できる範囲を増やすのは、そのままリスクヘッジになります」
ウチは少しずつ仮宿を入れ替えながら育ってきた、ヤドカリのようなものです、と謙遜する中山氏。それでも、これからも「グローアップ(成長)」し続けていきたいと、確固たる意志の瞳が燃えている。自身の成長が、会社の成長、そして、社員やクライアントの成長にもつながると信じて。地域に愛される看板屋として名高い同社の取り組みは、これからも末永く続いていく。
- グローアップ 株式会社
代表取締役:中山 秀雄
本社所在地:埼玉県久喜市上清久87-1
創業:2004年
社員数:15名(2020年8月現在)