2020年度の広告費はマイナス16%の大幅減の見通し。併せて2021年の広告費予測を発表、日経広告研究所

日経広告研究所は2月7日、2020年度の広告費が16.0%減と大幅に落ち込む見通しを発表した。ここまでの減少率を記録したのは、リーマンショック後の2009年度に発表された13.1%減以来。今回はコロナ禍の影響もあって、それを上回る予測となっている。

同研究所の予測は、経済産業省が毎月発表する「特定サービス産業動態統計調査」の広告業売上高データから算出。これによると、緊急事態宣言が発令された2020年4~6月に、マイナス24.4%、7~9月にはマイナス19.7%と大幅な売り上げ減少を記録。しかしながら、経済活動の再開が本格化した10~12月は持ち直しの傾向も見られた。

それでも、今年に入って再び緊急事態宣言が発令されたため、またも景況は下降期に。2021年1~3月の見通しは芳しくない。ただ、昨年の緊急事態宣言時のような極端な悪化を予想する向きは少ないそうだ。

出典:日経広告研究所

媒体別に見ると、昨年のテレビ広告は13.2%減少。しかし、前半の22.1%減と比べ、後半は4.5%減と急速に持ち直している。コロナ禍でテレビ視聴時間が増え、媒体価値を高めたのではないかという、調査結果も出ている。来年度は、東京五輪開催の影響も大きく、5.0%の高い伸びが見込まれている。同様にラジオ、新聞、雑誌のマス4媒体も売り上げを大きく落としたが、来年度はイベント関連の開催、ワクチンの普及などを前提に、回復傾向を予測する声が高まっている。

そして、最も顕著な落ち込みを見せるのが交通広告。全体でマイナス28.4%と大きな減少を記録した。年度前半に大きく落ち込んでも、後半には減少率を縮小している他媒体と比べ、なかなか持ち直しの気配を見せないのが、より一層の苦しさを感じさせる。その最大の要因は、コロナ禍の影響で駅の乗員人数が低迷し、広告の接触機会も減っている点。これ以外にも、広告需要を掘り起こすため、期間限定で交通広告の単価を引き下げた影響もある。ただ、単価引き下げを機に、広告主は徐々に広がりを見せている状況から、21年度以降の回復が待たれる。

一方で、さらなる成長を続けるのがインターネット広告。2020年度にも0.5%増える見込みで、媒体別では唯一のプラス成長を確保している。それでも、コロナ禍の影響は免れず、4~6月期は14.2%減、7~9月期は6.8%減と大幅なマイナスを余儀なくされた。巻き返したのは後半。10月からはプラスに転じ、年度後半は9.9%増と2ケタ近い伸びを見せている。通販やゲームなど、巣ごもり需要を捉えて成長するECサイトを中心とした業態は、インターネット広告との親和性が高く、コロナ禍でも積極的に広告を出稿。低予算かつ、広告効果の検証がしやすい点も強みとなり、新常態として定着しつつあるため、コロナ収束後も継続するとの見方は多い。来年以降においても、プラス13.1%と大幅増加の見込みだ。

このほか、折り込み・ダイレクトメールは4~6月期に51.6%という大幅な落ち込みを記録したが、秋以降は急速に持ち直した。DMは、Web関連と連動した取り組みも活発化しており、これらの広がりによって、今後も安定した伸びを期待できるという。

同研究所は、毎年2月に翌年度の広告費予測を実施。毎回、四半期ベースで将来の広告費を予想している。今回の2021年度予測では、景況回復、売り上げの増加を推算。具体的な数値として、広告費の前年比5.3%増を示した。達成すれば、プラス5.5%を記録した2004年度以来の数値となる。パンデミックの収束時期こそ不透明なものの、マクロ景気の好転に伴って企業活動が活発となり、前年度に大きく落ち込んだ広告需要の反動を見込めるという。また媒体別に見ると、引き続きインターネット広告とテレビ広告がけん引するとしている。

■予測値の算出について
広告費の予測値は、日経広告研究所と日本経済研究センターが共同で開発した「広研・センターモデル」を使用。広告費は国内景気と相関すると仮定し、財務省発表の「法人企業統計」の経常利益と、内閣府発表の名目国内総生産(GDP)の2つを説明変数として選び、このモデルに日経センターが予測する経常利益と名目GDPの伸び率を当てはめて算出している。

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