電通が2月25日に発表した「2020年 日本の広告費」によると、2020年1〜12月における日本の総広告費は、4〜6月の大幅減を取り戻すことができず、前年比で11.2%減の総額6兆1,594億円だった。
世界的な新型コロナウイルスの感染症拡大による、各種イベントや広告販促キャンペーンの延期・中止が大きな要因。2011年の東日本大震災以来となる9年振りの前年割れ、2009年のリーマンショックの影響に次ぐマイナス幅を記録した。
2020年は、外出・移動の自粛によって巣ごもり需要が活発化。デリバリーやネット通販、リモートワーク、オンライン会議、ウェビナーなど、日本国内におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)が一気に加速した。これに伴い、インターネット広告費が先行して回復し、通年では5.9%増となる2兆2,290億円のプラス成長を遂げる。結果として、新聞・雑誌・ラジオ・テレビのいわゆる「マス4媒体」広告費の総額2兆2,536億円に匹敵するマーケットへと成長した。
一方、プロモーションメディア広告費は、東京五輪をはじめとした各種イベントや展示会に加え、従来型の手法による広告販促キャンペーンに至るまで、続々と延期・中止に追い込まれて大きく減少。前年比24.6%減の1兆6,768億円だった。
この内訳として、「屋外広告」は前年比15.7%減となる2,715億円で推移。コロナ禍は長期契約に比べて短期のキャンペーン型広告への影響が大きく、緊急事態宣言後には短期ボードや屋外ビジョンなどの短期契約が大幅減。また、都心型の商業施設広告も、時短営業や催事・イベントの中止で収入が大きく減少した。ただし、屋外ビジョンの長期契約は堅調で、渋谷に日本コカ・コーラ専用の大型ビジョンが新設されたほか、位置情報データを活用したインプレッション数で営業展開する媒体社が本格稼働し、出稿の下支えに貢献したという。
「交通広告」は前年比24%減の1,568億円と、屋外広告以上のダメージ。 交通機関の利用者が激減し、中吊り、駅貼り、ドア横をはじめ、ほぼすべての媒体がマイナスとなった。媒体化されて以来、堅調に伸びていたデジタルサイネージも大きく減少。業種別では飲料・アルコール系の出稿が減り、ゲーム、SNS動画配信、クラウドサービス系の出稿が増加した。タクシー広告は、タクシーラッピングが激減。タクシービジョンの売り上げも一時的に減少したものの、インプレッション課金の導入によってキャンセルではなく減額出稿に変わり、下支えへ寄与した。
「イベント・展示・映像ほか」は、前年比38.8%減の3,473億円と更に厳しい。とはいえ、少しずつデジタルシフトが進み、企業単体だけではなく、大型展示会もオンラインでの開催が増え、10〜12月期は回復傾向で推移した。企業ショールームや文化施設などのスペース開発領域は、規模・予定を変更してオープンした施設が一部あったものの、総じて各種専門店、ホテル、文化・テーマパークなどの改装需要は減少。シネアドは緊急事態宣言から1カ月以上の休館、洋画の大型作品の延期などで、年間の興行収入は前年比45.1%減と過去最低(一般社団法人 日本映画製作者連盟 2021年1月発表資料)を記録した。
画像出典:電通