新人研修用に作った詳細なレクチャー動画が
仕事の受注に直結する集客ツールに
前述の2名とはまた違った活用方法を話してくれたのは、関西を中心にクロス施工を得意とする内装会社、Wallcraftの白河政好さん。
YouTubeチャンネル「壁紙はりかえ ウォールクラフト」は、現在の登録者数1.3万人。InstagramをはじめとしたSNSでの情報発信にも力を注ぐ。チャンネル開設は2019年。スタッフを教育する際の研修資料として活用するために投稿されたのがスタートとなった。
現場での作業をそのまま収録し、新人が見たいタイミングで技術を学べるよう、解説を入れた動画をアップ。一度撮影してしまえば、何度も教育に時間を割く必要がない上、意欲的なスタッフは動画を繰り返し視聴するので、成長スピードも飛躍的に早まるそうだ。現場でのマンツーマン指導が難しい、この課題を打破するためのアイデアから思わぬ展開に発展する。
視聴者の要望に応える動画配信
DIYユーザーから人気を獲得
教育用に作成した動画は、いつしかDIYユーザーを中心としたファンを獲得。気付けば登録者も増えていった。「反響が数字として目に見えると、動画を作るのもだんだん面白くなってくるんです」と白河さんは笑みをこぼす。
ほどなくして、社員に向けた動画ではなく、DIYユーザーに向けたコンテンツ編集に取りかかるように。「内向きにやっていた動画が、外向きに発信するビジネスツールとして使えるんじゃないか、と思い始めたのもこの頃ですね」。YouTubeを始めて約4カ月後、化粧シートの貼り方を紹介する動画をきっかけに、再生回数と登録者数がうなぎ登りに伸びた。さらに、実際の問い合わせにもつながるようになったそうだ。
現場で撮影を行うため、作業時間のロスは大きいものの、投稿自体は無料で行えるのが大きな魅力だと白河さんは話す。社外からの視聴を意識してからは、オープニングにアニメーションを組み込むなど、楽しく見られる工夫も取り入れるようになり、当初とはずいぶんスタイルが変わった。
続けて、YouTubeは集客に役立つ最強ツールだと力強く話す白河さん。「ホームページ上にある施工完了後の写真だけだと、どんな職人が具体的にどんな作業をしてくれるのか不安に思うユーザーさんは多いんです。職人の顔だったり実際に作業する様子が見えると、安心して発注できるんだと思います」と持論を展開した。現在の受注件数は、チャンネル開設前と比べると4倍にまで増加し、仕事の1/3はYouTube起因というのだから驚きだ。
包み隠さず全てを動画にさらけ出すスタイルは今でも貫き、「よくこんなところまで無料で見せるなぁ」と詳細な技術を無料で公開することに異論を唱える同業者も少なからず存在する。しかし、「こんなに丁寧にやってくれるんやねぇ」などの一般ユーザーからのコメントを見ると、信用につながっているという実感も持てた。「インテリアに興味を持ってくれる人を増やす方が、市場にとっても最終的に大きなメリットを得られると思うので、アンチコメントはあまり気にしないようにしています」と白河さんは言う。
編集面では、視聴者目線を大切にしている。音声オフでも見れるテロップ編集も、コメント欄からのリクエストに応えた結果だ。収録時に説明しきれなかった内容もテロップで補足。見やすい動画づくりは継続的な視聴者獲得に一役買っている。さらに、同社では現在スタッフの求人も動画で募っている。働く仲間を募集中ですと穏やかに語った。