リンテックサインシステム(LSS)は8月21日〜28日、デザイン展「RAMPO幻影〜須藤絢乃vs森林堂の世界〜」をJR飯田橋駅近くのアートギャラリー・ii-Crossingで開催した。
今回は、稀代のミステリー小説家である江戸川乱歩の「押絵と旅する男」や「D坂の殺人事件」などの作品を題材として、デジタルプリントでの表現を試みた。京都で着物のデザインを手がける森林堂の水井氏が、 乱歩のさまざまな文章や言葉を新たな解釈でアレンジしている。このため、完全オリジナルのデザインをIJPで出力し、壁紙やガラスフィルムなどで再現する展示内容となった。
展示作品は、なかでも江戸川乱歩の作品を再現した「心理試験」のスペースが印象的だ。心理試験で用いたワードを篆刻(てんこく)風の文字でイメージ。そのデザインをガラスフィルムに出力・掲出し、光が透過すると篆刻風の文字は床や壁に投影される仕組みだ。
壁面では、作中盗まれた大金をイメージし、当時の「百円札」を再現。同じサイズで作成し、プリンテリアや糊付きの壁紙に出力している。会場内にある六歌仙の屏風は、被害者が殺害されるときに破かれた屏風で、その事件を解決に導くキーとなるものだ。このほか、床にはゴザを敷き、当時の現場をイメージした空間を演出した。
これらの出力に活用したプリンターは、会場でも展示していたエプソン販売の水性顔料機「SC-T7750D」をはじめ、レジン機「R5050」や低溶剤機「SC-S80650」、ミマキエンジニアリングのUV機「UCJV300」、LSSの2.5Dデジタルエンボス機「DIMENSE」となっている。
会場内では、併せて森林堂の主力業務である「着物」も展示。同社はデジタルツールで顧客の要望に応じたオリジナルデザインをイチから起こし、テキスタイルプリンターでオーダーメードの着物を製作するのを強みとする。「着物もデジタルでできる」という点も今回の展示ポイントとなった。 さらに、写真家の須藤絢乃氏が展示空間やモデルを撮影し、その写真をそのまま大判IJPでプリントして掲出する試みも展開した。
来場者は一般客も多く、来場者に話を聞くと、「大判インクジェットプリンターや産業用プリンターで、壁紙、ガラス、着物がつくれることにびっくりした」というような驚きの声が非常に多く寄せられた。
同社担当者は、アートギャラリー・ii-Crossingを「デジタルプリントの良さをこれからも広めていく場として活用したい」としている。続けて、「限られた資源のなかで、在庫のいらないデジタルプリントの方式は、時代のニーズにマッチした生産方式です。かつ色数やリピート版もいらないため、消費者の選択肢を大きく広げると考えています」と述べた。今後の展望については、「アートの分野でも、ジークレープリントのようにインクジェット方式は一般的です。このため、同分野でもサイン、ディスプレイ、インテリアで培われたデジタルプリント技術を活用し、表現者の表現したいこと、表現できる幅をもっと広げていけるよう、チャレンジし続けていきます」と語った。