自らの業態を「情報伝達業」と銘打つ
LED電光掲示板の事業は、3.11東日本大震災後に転換点を迎えた。発生翌日の2011年3月12日には京都市で、国内初の音声ガイダンス機能を備えた防災情報システムの運用開始が決まっていた。設置に赴いた社員たちは、ちょうど被災地の支援に向かう京都市消防局の出立式にも立ち会い、自分たちの製品が、まさにこれから人命を守っていくシステムであることに身震いしたのを今でも覚えている。
防災情報システムの新規事業は、社内では「屋外広告業から逸脱するものでは?」との指摘もあったが、同友会で「ありふれた業態ではなく、自社独自に何業かを明確にすべき」との教えを思い出し、自らを情報を形にする「情報伝達業」と定義付け、新たな社是とした。
その後、LED電光掲示板は、2020年東京五輪のカウントダウンに採用されるなど、売り上げの半分を占めるまでに成長。このうち、防災システムはまだ5%ほどだが、72時間停電しても情報を発信し続ける「電子ペーパー」を開発したことで、これからの事業の中核となっていくことが見込まれる。
日本のモノづくりの現場は将来的に、少子高齢化によって、働き手を確保するのが難しくなり 、このままでは著しく生産性が停滞すると言われている。課題解決のために立石氏は、「いこる」という言葉を繰り返し口にする。
備後地方では、炭が熱を帯びて赤くなることを「いこる」と言う。バーベキューをするために黒い炭を入れ、網を敷き、赤々と“いこった”炭の上に肉を置く。肉を「良い出会い」「良い仕事」だと見立て、炭を経営者だとすると、いこっている経営者の上にほど、「良い人材」「良い仕事」が自然と乗ってくる。「“いこっていない人”ほど、景気や世の中のせいにしてしまいがちだが、経営者自身が“いこる”ことで、会社の魅力が上がり、人がおのずと集(つど)ってくる」と説く。
現に、最新のサイネージを学ぶ米国の研修旅行をはじめ、スキルアップのための資格取得の支援制度など、仕事もプライベートも充実できるようなワーク・ライフ・バランスの取れた職場づくりを目指した結果、ここ数年は毎年、一地方の中小企業に興味を持ち、県外からも新卒採用に応募してくる大学生も増えている。
「故郷に錦を飾るという言葉があるが、それ以上に素晴らしいのは、故郷で“錦を織り続けている”中小企業。地方の小都市だから、都会には敵わないではなく、地域に根差した中小企業だからこそ、できることをやってやろうの“覚悟”を持ってもらいたい」とエールを贈る。
- 株式会社 タテイシ広美社
代表取締役会長:立石 克昭
代表取締役社長:立石 良典
本社所在地:広島県府中市河南町114
創業:1977年7月
設立:1986年7月
社員数:50名(2019年1月現在)