3. ハーヴィッド 小田利洋社長

JR新潟駅から白新線で一駅の東新潟駅にほど近い一角に、大型のチャンネル文字がひと際目を引く建物がある。ガラス張りの入り口からは、ブルックリンのカフェを思わせる内装が存在感を放つ。ここはサイン業から端を発し、建築内装分野にも進出して数多くの案件を手掛けるHEAViD(ハーヴィッド)の本社だ。代表取締役の小田利洋氏は、「デザインに携わるからこそ、格好良くありたい」と話す。全国的にみても、人口が減り続けている新潟県。若年層が就職で県外へ流出してしまうことに起因するという。HEAViDでは、社内の働き方改革にも取り組み、3Kのイメージが付きまとう看板や建築の現場を、プロフェッショナルが集う職場として「格好良く」変えることを目指している。

30歳を機に農機小屋からのスタートアップ

HEAViD(ハーヴィッド)は、2007年に看板業としてスタート。当時から代表を務める小田利洋氏は、県内の看板製作企業で営業マンとして20代を過ごした後、元来あった経営者になる夢をかなえるため、30歳を機に独立した。

当初は、「経済的にもゆとりがなく、場所も車も無かった。仕方なく、新潟市内の親戚を頼り、農機小屋を借りて事業を開始した。前職の人脈を生かし、飲食、美容、携帯電話会社にサイン製作・取付などのコンサル営業を行い、経営はすぐに軌道に乗った」と小田氏は述懐する。

1年が経過した頃、さすがにこのままでは社員も雇えないと思い、たまたま見つけた物件で、オフィスとなる母屋と倉庫の2棟を賃借した。倉庫を借りたことで、施工の領域にも手を広げ、大判インクジェットプリンターや加工機を導入し、シートや木材の加工も手がけ始めた。社内体制もデザイナー、現場監督、営業と少数精鋭ながら、幅広い案件に応えられる体制が整った。

建築内装への挑戦とデザインの矜持

転機となったのは2012年。クライアントからの強い要望をきっかけに、建築内装にも進出。その後、設計図面はもとより、意匠設計の検討に使うCGや3Dのイメージパース作成も受注するようになり、シフト転換を図った。

現在では年間1億8000万円の売り上げのうち、建築内装が4割を占めるまでに成長した。出店計画などの企画段階から参加することも多く 、設計事務所やデザイン事務所から直にオーダーを受けることもあるという。

これまでの実績では、複合商業施設の内装デザインをはじめ、指定業者にも選ばれている全国展開のホームセンター、著名なミュージシャンのライブステージ設営、ファッションブランドの店内モニュメントなど、サインから、建築内装、ロゴ考案まで、クライアントの店 づくりをデザイン面でバックアップしている。近年では、店舗のコンセプト、家具や照明といった商空間の提案も増えてきている。

小田社長は、今では施工から完全に手を引き、デザインに特化することも視野に入れる。「地方では看板業というと、ほぼ製作・取付が大半を占めるのが現状。そこには熾烈な価格競争が存在し、参入すれば疲弊してしまうだけ。そもそも看板の世界には設計やデザインに対する意識が低く、価格が無いに等しい。それなら、デザインを武器に、元請けの立場つまり価格を決定できるポジションを目指したい。その上で、斬新で人を魅了するデザインを世に生み出すには、作り手自らが格好良くなくては」と力説する。

倉庫をリノベーションした社屋

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