カーラッピングの技術を伝えるセミナー風の動画を投稿
他社とのコラボ企画で登録者数激増
Twitter動画をベースとしたショートムービーを投稿しているサインズシュウとは対照的に、長めの再生時間でセミナーのような動画を投稿しているのは、カナダに在住中のカーラッパー、長谷川景一さん。2020年2月に開設した「けーいっちゃんねる」は、現在登録者数2.64万人に上る。
長谷川さんは、かつて日本で車両塗装や板金業に従事していた職人。ワーキングホリデーを使ってカナダに渡航した際、偶然にもカーラッピングと出会い、本格的に技術を極めたい思いから移住を決めた。同時に、北米に比べると周知もまだ進んでいない日本に向けて、「何とかカーラッピングの魅力を知ってもらいたい」と思ったのがチャンネル開設のきっかけだ。「日本人に向けたセミナー動画を配信し、マーケットも広げていきたいです」と意気込みを語る。
配信内容は、海外のYouTuberを踏襲しつつも、日本人ならではの動画を心がけている。「業界のトップYouTuberはカナダ在住の方ですが、動画を見てみたら、品質が低く貼りづらい製品を自己流で力任せに貼り付けるといった内容だったんです。何も知らない人が見てしまうと、誤解を招いてしまう。僕のチャンネルでは、日本人ならではの繊細で、きれいな貼り方を発信したいです」
当初は全てが手探りで、奥さんと二人三脚、カメラワークから編集に至るまで試行錯誤の連続。投稿を始めてからしばらくは再生回数も、登録者数も伸び悩んでいたそう。「海外移住したばかりでラッピングからそれた動画が混ざったり、手振れなどで見づらかったりしたのも原因かもしれませんね」と振り返る。知り合いに登録や視聴をしてもらい、100回程度の再生数がやっとだった。
アルゴリズムに翻弄されながらも
一般人向けの動画投稿が転機に
転機が訪れたのは突然だった。登録者数が100人ほど急増したのだ。「おそらく、Googleアルゴリズムの影響だと思うんです」と当時を思い出す。それからSEO対策を考えて動画を編集するようになると、コンスタントに再生回数も伸びていった。
登録者数が1,000人を越えた頃、知人と協力し合えたのも大きかった。「DFCクエストの知念さんと一緒に動画内でプレゼント企画を行ったんです」。この企画は3万回以上の再生数を記録し、DFCクエスト側にも問い合わせが入るなど成功を収めた。「初期から応援してくれていたのが知念さんだったので、本当に今でも感謝しています」とほほ笑む。
その後、ある投稿を機に登録者数はさらに跳ね上がる。ポルシェのボンネットを装飾する動画だ。こちらもGoogleアルゴリズムが関係しているのでは、と長谷川さん。「例えば、有名YouTuberが似たような動画をアップすると、その最後におすすめとして僕の投稿が自動でピックアップされる時もあります。僕の動画もそんな風に広がったのかもしれませんね」
登録者数が増えてからは、フォロワーのリクエストに応えた配信も展開。でも、どんな動画が伸びるかと具体的に聞かれると、はっきりとした答えを出すのは難しいと苦笑する。やはり、Googleアルゴリズムに翻弄されるのはYouTuberの宿命なのだろうか。
カーラッピングの専門技術に触れる動画を発信するのは、一部の同業者から反感を受ける覚悟もあったそう。しかし、ふたを開けてみると「勉強になります!」など肯定的な反応が多く安堵したという。「僕は日本に住んでいないので、集客目的では考えていないんです」。業界の認知向上につながったり、知識不足で失敗してしまう人が減ってくれれば嬉しいと続ける。
動画内では、プロに依頼するとどのようになるのかも紹介し、近所のラッピング工房に行くのも一手だ、と主張。そうして、ユーザーと職人の潤滑油のような役割を担いたいと力を込める。
カーラッピングの技術は、貼り施工のスキルアップにもつながるので、たくさんの看板屋さんに取り入れてほしいとも話す。YouTubeを始めて得られたメリットは前述の通りでやりがいも感じているが、デメリットを聞かれると思い当たらないと即答。ただ、自身の経験から、配信する動画の目的を見失わないのが大切だと強調。
今後はHow to動画だけでなく、エンターテイメント要素も盛り込んだコンテンツも発信したいと目を輝かせる。「より一層コンテンツを充実させるためにも、登録と高評価をよろしくお願いします!」と白い歯を輝かせた。