8. アサイマーキングシステム 浅井 大輔社長

業容が大きく拡大する契機となった航空機の大規模ラッピング案件。現在でも、多数の航空会社と連携し、20年以上にわたって飛行機のラッピングを手がけている

新規参入企業と一線を画す
高い施工技術と一貫サービス

より大きな転機になったのは、1998年。国内に新規参入してきたとある航空会社と連携し、航空機の機体に大規模なラッピングを施す仕事を受注した。その頃はまだ、飛行機への貼り技術が確立していなかった時代。基準やルールもあいまいななか、航空整備士と互いに情報交換をしつつ、ノウハウを形成していった。「とはいえ、高速で高高度な空を飛ぶ旅客機ですから、失敗や雑な作業はもちろん、航空法・安全基準を満たさない施工も決して許されません。慎重かつ緻密な作業、品質管理と技術が要求されました」。そのかいあってか、この後には多数の航空会社から案件を獲得。以降、20年以上経った現在でも、航空機ラッピングのパイオニア企業として多くの案件に携わっている。

2000年代から急激に増えた鉄道広告

また、さらなる転機は続く。2000年に入ると、東京都屋外広告物条例の改正でバスラッピングの規制が緩和。これに伴い、路線バスの広告掲出が可能になったのだ。次いで、翌年以降にはタクシーや鉄道の条例も改正され、車体広告が貼れるようになった。当然同社にとってはビジネスチャンスになったが、そう諸手を挙げて喜べるものでもなかった。異業種からラッピング業界へ参入してくる企業が、雨後の筍のごとく相次いだのだ。ちょうどIJPの性能が飛躍的に高まってきた時期と重なったのも、それを後押ししたタイミングだった。しかし、こちらも貼り施工に20年近く傾倒してきた先駆者として、引けを取るわけにはいかない。何より貼りの技術が一朝一夕で身に付かないのは、自身の経験を持って誰よりも分かっていた。

商用車やトラックのフリートマーキングは、年間1万5,000台ほど施工している

これまでの現場で培った多くの経験とノウハウを武器に、ライバル企業に負けない安定した受注を獲得。一気に売り上げを3億円ほど伸ばし、企業の地盤をより揺るぎないものへと固める好機に変えた。「機械の性能はどんなに上がっても、そこに職人の腕が付いてこなければ宝の持ち腐れです」と、浅井氏。ラッピングやマーキングの仕事は、技術があってこそ。それも、貼るだけで終わりではない。きちんとフィルムの耐候性を保ち、品質をしっかり保証し、剥離時にはきれいに傷ひとつなく簡単に剥がせる。ここまでできて、初めて「当たり前の仕事ができた」と言えると思いますと、力強く語る。

地上用変圧器の装飾

現在では、年間で車両マーキング約1万7,000台以上、鉄道約1,800台、エスカレーター約2,000カ所の案件をこなすなど、7,500社を超える顧客を抱える同社。最大の特徴は、顧客ニーズに寄り添った細かなヒアリングから材料選定、デザイン、施工、品質管理に至るまで、これまで培ってきた知見を全て駆使した一貫施工だ。近年は、まちの無電柱化に伴う地上用変圧器のラッピングや、風力発電のブレードの腐食を防ぐプロテクションフィルム貼りなど、オンリーワンのビジネスも手がけている。

事業安定後も、売り上げは右肩上がり。2019年には、歴代最高額となる14億8,000万円を達成した。

風力発電用危機へのフィルム貼りなど、他社には真似できない案件も数多い

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