それを裏付けるように、「人員の過不足状況」調査では、60%が「人材不足」と回答【図6】。前年比でも11.5ポイント増加しており、人手不足は加速している。業種別に見るとさらに深刻で、建設業は78.7%が「人材不足」と回答。全業種で見てもトップの数値となった。
そして、それら人材の確保に向けて、新たな取り組みを模索している企業も多い。「2020年以降の新たな取り組み状況」の調査では、80.1%の企業が「実施している」と回答【図7】。そのなかでも、「人材の採用・教育の強化」に取り組む割合が37.2%と最も高かった。次いで、32%で「新製品・新サービス開発」、27%で「デジタル化・ITツール活用」が続いた。やはり、オフィスのデジタル化に対する意識は業種を問わず高まっていると言えそうだ。さらに、それら新しい取り組みを行っている経営者を年齢別に見てみると、40歳代以下は83.8%なのに対し、80歳代以上は63.9%と、年齢が若いほど実施割合も高い傾向にあると分かった。
そして、新たな取り組みのなかでも「脱炭素・カーボンニュートラルの取り組み状況」については、サイン業界にとって興味深い結果が得られた。全体で見ると、「既に取り組んでいる」と回答した割合は17.9%【図8】。しかし、建設業界に限ると33.5%と、業界別で最も大きな数値を記録した。このほかで唯一3割を超えた運輸業界と合わせて、カーボンニュートラルに対する高い意識が垣間見えた。
最後に、事業承継の現状について見ていこう。最も多かった回答は、「後継者を決めていないが、事業継続したい」で35.8%【図9】。後継者不足に悩む経営者が多いのを如実に実感する結果となった。一方で、「M&A等で会社を譲渡する予定」と回答したのは4.4%ながら、前年と比べると1.5ポイント増加しており、関心を高めつつあるのが分かった。
中小企業委員会では、会員企業の経営実態に即した支援策の実現を目指し、例年同アンケートを実施。各企業の業況や新たな取り組みのほか、人手不足や価格転嫁など、中小企業が直面する経営課題を総合的に検証している。今後も継続的に調査を行っていき、中小企業の業務改善に役立てていく構えだ。