番外編:後々の健康のためには時には無理も必要

これまで、業界内で意外と知られていないような内容に触れてきた本連載。かれこれ4年半にわたって続けられたのも、編集部への電話やアンケート結果などを通して、読者からの反響を得られたお陰だと思っている。さて、今回はたまには趣向を変えて、気軽に読める一般的な話として、健康にまつわる私の考えを述べてみたい。

長く仕事を続けていると、多かれ少なかれ心や体が疲れたり、病んだりする。ただ、とても忙しくても頭は冴えていたり、かなり落ち込んでいても仕事は捗ったりと、気力と体力は必ずしもイコールではない。しかし、中年に入って少し経つと、体力が落ちると気力にも大きく影響を与えるようになっていく。特に年齢を重ねるごとに、この傾向は増していくのではないだろうか、と今まで見聞きしてきた話から思う。

ここで勘違いしないでほしいのは、体力と健康は同じではない点だ。体力づくりは、何歳からでも始められるが、健康は過去の積み重ねによるものになる。それまでの数十年に無茶苦茶な生活をしていた人が、急に意識を変えたところで快方するのは難しい。

とはいえ、人の健康とは奥が深い。団塊の世代に代表されるように、幼少期から健康を度外視したハードな環境で育った人は、この業界に限らず多い。皆さん、往々にして体がとんでもなく頑丈で、そんな年齢とは思えないほどの馬力を持つ人も多い。もちろん、体を壊して健康に気遣っていても、周りに見せないだけの人はいるだろう。一方、中年より若い壮年世代は、例えば部活で水を飲んではいけないなどの根性論の時代は過ぎ去り、ロジカルな考えのもとで育っているため、ほどほどに健康な人が多い。ただ、それゆえに無理を強いられた経験が少なく、本当に底力を出さなければならない時に乗り越えられるかは少し疑問視されやすい。

結論から言うと私は、若い頃にたとえ数年間でも体を壊さない程度に無理をした方が、人間としては成長できると感じている。それは体力だけでなく、気力も。例えば、ずっとストレスから逃げ続けた生活をしていると、体は健康なのかもしれないが、自分の限界が全く分からなくなってしまう。

これを把握できていない以上に、怖いものはないと思う。要するに、乗り越えた経験もないからキャパは小さいままで、加えて自分はこれ以上やるとまずいという判断も効かない。そうなると、急に仕事で頑張らなければならなくなった際、簡単に体を壊したり、心を休ませなければいけなくなったりする—。若い方は一度でも構わないので、あえて体にも心にも強いストレスを与えるような経験をしてみてはどうだろうか。日本の文化として失敗を嫌う意識は根強いものの、若いうちは果敢にチャレンジする姿勢を貫いてもらいたい。自身の限界を知ることが後々の健康を守る上で、とても役に立つと個人的には思っている。

結びに、健康を維持するためのちょっとしたポイントを上げてみたい。具体的には、「1週間単位でのカロリー摂取量の管理」だ。会食の多い業界で1日単位では難しい面もあるため、食事の回数を減らすのではなく、タンパク質や食物繊維などのバランスを1週間単位で考慮するのをお勧めする。これにより、最も良くない急に太るということを避けやすくなる。食事や睡眠、運動のどんな健康法であっても、営業と同じで1日、1週間だけで効果を期待するのではなく、何年も続けることによって、その結果は自ずとついてくる。

また、読者には経営層も多く人前に出る機会は頻繁にあると思うが、その前準備として酒抜き・塩抜き・水抜きが効果的だ。顔をはじめとした全身のむくれが取れ、相手の印象も上向きやすい。年を重ねると、まじまじと自分の体を見ようとしなくなりがちだが、たまには意識して鏡で全身を見つめ直してみてはどうだろうか。

    文・髙木 蓮
    20年以上にわたり、サイン業界に身を置き、資機材メーカーのトップセールスマンとして活躍。日本を代表する製造業大手からの信頼も厚く、その人脈と知見をもとに、さまざまな新商品の開発にも携わる。

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