1. タテイシ広美社 立石克昭会長

コンピューター導入(1988-89年):コンピューターカッティングマシンの導入に合わせ、女性社員を起用する。それに伴い、立石会長は筆文字書き職人から営業へ転身した

ここ数年は、サイン業界にも世代交代の波が来ており、2代目、3代目の社長が増えている。だが、立石氏の目には彼らは仕事を楽しんでいないように映る。そんな時には、かつてベランダの手すり塗りで夫人が漏らした言葉を思い返す。自社のスタッフにも、「仕事を楽しもう。面白くなかったらモチベーションが保てないし、仕事の質も低下を招く。これが天職だと思えるように、考え方を変えたり、工夫したりして、この道でやっていく覚悟を持とう」と、折にふれて説いている。

人材の確保は、企業経営者の団体「中小企業同友会」の共同求人で採用できると聞き入会。この会では、長年苦楽を共にしてきた同級生の社員から「会社の方向性が見えず不安だ」という訴えがあり、ショックを受けたことをきっかけに、経営指針書を作成するセミナーにも参加し、会社の方針を社内で“見える化”する意義を学んだ。

「経営はタクシーの運転手と乗客の関係と一緒。どちらが経営者で社員かは人によって分かれるが、私はハンドルを握って会社を動かすのが社員で、乗車料金(給与)を支払うのが会社の代表だと思っている。世の中の中小企業の社長は、きちんとドライバーに行き先を告げていないのではないか。それでは社員が不安を覚えてしまう。社員に分かる形で、会社のビジョンを示さなければ」。

指針書はただ作っても、誰もが一瞥(いちべつ)するだけで終わってしまう。そうならないために、社員一人ひとりのプライベートの夢と顔写真も一緒に載せ、当事者意識を持たせている。中には、今年の夢に「冷蔵庫を買う」と書くスタッフもいるが、ダメ出しはしない。個人の夢は大小さまざまで当然。年4回面談する場を設けて、経営者が社員の生の声をじかに聞きとって、彼らの悩みや将来の展望を共有することを心がけている。

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