「付加価値の高い印刷」「短納期への対応」「サステナブルエッジ」
HP Latex 700/800シリーズのスペックについては、日本HP プリンティングシステムズ事業統括 Latexビジネス本部 大型プリンタエバンジェリスト(プリセールス/テクニカルコンサルタント)霄洋明氏が「HP Latex 800 プリンター」の実機を前にデモンストレーションを交えながら解説した。
霄氏は同機の特長として、「付加価値の高い印刷」「短納期への対応」「サステナブルエッジ」の3つの柱を挙げる。ウリとなっているホワイトインクは、「最も白いホワイト」を謳い、他社のUVプリンターと比較して不透明度が高く隠蔽性に優れ、透過性のある素材や色付きメディアでも下地にした白がその上に乗るカラーを際立たせ、時間の経過に伴う黄変も防ぐ。ホワイト印刷時には、1層、オーバーとアンダーの2層、3層(サンドイッチ)と、用途に合わせたプリントモードが用意されている。
カートリッジを日々攪拌(かくはん)しなければならないなど、一般的に管理が難しいとされる白インクだが、同機にはインクを循環させる「自動リサーキュレーションシステム」を装備しているため、プリントヘッドのノズルだまりを自動で解消する。
また、短納期を可能にするプリントヘッドは、全面的に設計が見直され、工具や専門知識が無くてもユーザー自らが交換できるようになった。ヘッド自体の幅も約1.5倍に広がったことで、必然的にひと描きのプリント量も増加。そのため、出力スピードは、HP Latex 800 プリンターで36㎡/時、HP Latex 700 プリンターでも31㎡/時(屋外バナー、4パス)の高生産プリントを達成した。
ヘッドのコアとなる新機能のマイクロリサーキュレーションを装着したノズルは、髪の毛よりも細いノズルにマイクロポンプを仕込み、インクが循環して常に新鮮な状態を保つ。ノズルの形状も円形ではなく、8の字のような非円形にしたことで、高速出力と色の安定性を両立し、4ptの文字でも従来機よりシャープにプリント。
これまでHP Latexプリンターでネックとなっていたインク硬化時の高温化も解消され、インクの硬化温度が約116度で乾燥ドライヤーは約40度と、旧世代機よりも最大30%低温化。これにより、寸法安定性が増しただけでなく、合成紙、オフセットペーパー、穴が開いているパーフォレイテッド(ワンウェイ)、熱に弱い再帰反射系のフィルムなど、メディア汎用性が高まり、ホワイトインクとの組み合わせで、ウィンドウグラフィックや壁紙、キャンバス、テキスタイルと、HP Latexプリンターが活躍できる用途がさらに広がった。
ホワイト以外のインクも刷新されており、顔料の充填(じゅうてん)量が多い新832/872インクを採用。HP Latex 700プリンターは1L、HP Latex 800プリンターは大容量3Lを各色搭載している。
さらに、カラー、プリント面をラミ無し3年の耐候性で保護するオーバーコート、顔料粒子を固定するオプティマイザーのインク使い分けが可能となり、ラミネート加工をする際はオーバーコートを無くし、インクコストを抑制。ラミなしであれば、オーバーコートの量を調整して、アジア圏で好まれる濃い色合いを表現できる。
3つ目のサステナブルエッジ=環境への配慮では、水性の名の通りHP Latexインクの65%が水で構成しているため、無臭かつ安全な印刷環境を提供する。
プリンターの筐体も再生プラスチックを採用したほか、インクのプラスチックカートリッジを廃止。段ボールに変更することで、使用後は回収専用箱を通して再利用する“脱廃プラ”の潮流に即したプリンタ運用が想定されている。
霄氏は、コロナ禍でのリモートワークの観点で、「プリント作業も無料の専用アプリHP PrintOSを利用すれば可能になる」として、2016年にリリースしてから随時バージョンアップしている各機能を紹介。スマートフォンやタブレット、PCの各端末からアクセス可能で、場所を問わず遠隔でのプリント指示はもちろん、現在の稼働状況やインク残量、最大6カ月のジョブ保管、ランニングコストの判断、RIPソフトウェアを使いこなすためのトレーニングなど、場所や時間の制約を受けない出力業務をサポートする豊富なメニューが揃っている。