帝国データバンクは8月8日、2022年7月の企業倒産についてのデータを発表した。その結果、コロナ禍になってから初めて3カ月連続の増加となった。そのなかでも、サイン業界に関連のある「建設業」は、27件。これは、業種別に分けたうち2番目に多い数値となっている。
その要因として挙げられるのが、ウッドショックと呼ばれる木材や資材の物価高騰。燃料費の高止まりが続く「運輸業」(33件で業種別倒産数1位)とともに、ここに来てコロナ禍の底打ち感は鮮明となってきている。
さらに、原油や燃料、原材料などの「物価高騰」の影響も大きい。小麦や油脂のほか、原油高による物流費や包装資材、電気料金などの価格高騰が企業収益を圧迫し、いわゆる「物価高倒産」する企業は増え続けている【図1】。

【図1】物価高倒産 月別発生件数推移
これらの調査を開始した2018年1月から2022年7月までの合算で判明した「物価高倒産」の数は累計558件。しかし、2022年に限って見ると、1~7月だけでなんと116件に達し、過去5年で最多となった2021年の年間倒産数138件を大幅に上回るペースとなっている。
その上7月は、単月で最多の31件判明。前年同月(17件)を82.4%上回るなど、早ければ8月にも年間最多件数を更新する可能性が高いという。今後も価格転嫁が難しい中小・零細企業を中心に、「物価高倒産」はさらに増えるおそれもあり、サイン業界も「対岸の火事」と軽視できない問題に発展しつつあると言える。
2022年の116件を業種別に見ると、燃料高の影響が大きい「運輸業」(33件)がトップで、全体の約3割を占めた【図2】。以下、木材・資材高の余波を受けた「建設業」(27件)、「卸売業」(18件)の順。なお、「物価高倒産」の約8割が負債5億円未満の中小企業が占める。

【図2】物価高倒産 業種別(2022年)
経済産業省では、7月に「物価高における流通業のあり方検討会」を立ち上げ、流通・サプライチェーンの課題やDXの促進など、今後の方向性を議論する検討会を実施。8月3日に第2回を開催するなど、早急な改善に努めている。
物価高騰の影響は、現状倒産が目立つ「運輸」「建設」にとどまらない。倒産には至らないまでも、確実に中小・零細企業の体力を奪っており、今後はまちの看板屋にも、「物価高倒産」の波が押し寄せてくる恐れもあるだろう。各サイン製作会社も歯を食いしばり、不景気に負けない根強い企業づくりを進めていきたいところだ。