7. 旭堂看板店 水谷俊彦社長

高い場所であっても、足場を使わずに作業可能。ロープ施工は、ローコストかつ短納期を実現する

東と西の草分け企業に続け!
ロープ施工会社の新鋭として看板業界に切り込む

人事のごたごたも落ち着き始め、再び軌道に乗りつつあった矢先、またも悲劇に襲われる。未曽有の経済ショックとなったコロナ禍だ。同社も他のサイン製作会社の例に漏れず、売り上げが悪化。特に、全体売り上げの3割ほどを確保していたLED事業が、外出自粛に伴うパーキングの需要低下などで暗礁に乗り上げたのは痛かった。

2013年に設立したLED事業部。現在、全体売り上げの約3割を占める

それでも何とかやりくりし、1億円以上の売り上げは確保。とはいえ、2019年は自身が社長になってから最低となる1億2,000万円台にまで落ち込んでしまった。しかし、後ろを向いてばかりではいられない。俊彦氏は、既に次の事業の柱になり得る一手を打ち始めている。それが、2020年から本格的にビジネス化し始めているロープ施工だ。これは、職人自身の体を中空でロープに結び、つるされた状態で作業する施工方法。身ひとつで施工できるため、狭い場所でも看板を取り付けられ、ローコストで提供できる。

サイン業界で懸念されがちな安全面においても、空中養生の設置を模索するなどして、模索を続けている

ロープ施工に可能性を感じたきっかけは、サインの森でたびたび開催される交流会での出会いだった。同組合認定企業のひとつである埼玉県のグローアップと、福岡県のRASTAQは、ロープ施工ではともに豊富な実績を持ち、地域NO.1との呼び声も高いサイン製作会社だ。話を聞くだけで、その繊細な職人技にあこがれを覚え、俊彦氏の好奇心が湧き立った。「最初はまず単純に、かっこいいと思い、興奮しました。ほどなくして自分で調べてみたところ、東海地区にまだ競合が少なく、ブルーオーシャンになると感じたんです」。熱い職人魂が刺激されると同時に、俊彦氏の冷静な部分も、ビジネスチャンスだと訴えかけていた。そしてなにより、短納期で施工できる点が魅力的だった。これなら、顧客に1日でも早く看板を提供できる。水谷氏の心に根付いた「粋な心」が、その一歩を後押しした。

やると決まったら、次は本格的な資格の取得が急務だ。2020年5月、産業用ロープアクセス協会「IRATA」に加盟している兵庫県の企業を訪ね、技術講習に参加。資格取得に加えて、看板業界以外の声も聞き、見聞を広げた。

今では社内で5人のスタッフがロープ施工に対応できるようになったほか、工場内に専用の練習場も用意※1。たとえ現場作業がない日でも、鍛錬を欠かさないようにしている。「自身も初挑戦の身なので、スタッフたちとともに毎日勉強中です」とはにかむ俊彦氏。東西の草分け企業に負けないよう、研鑽を積んでいる。

工場内に設置した屋内練習場で、汗を流すスタッフたち

事業を開始して間もなくは、認知が進まず案件につながらなかったものの、SNSやホームページで地道に発信し続けると、少しずつ引き合いも増えていった。現在では、サイン事業の売り上げ2割以上を占めるにまで拡大。来期以降のV字回復に向けても、大きな役割を担っている。

5人のスタッフたちが案件に携わる

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