創立50周年を迎えた大手総合プロラボのイーストウエストは2月17日から、神奈川・横浜に構える自社工場・新横浜ラボラトリーでの使用電力を「100%再生可能エネルギー」に転換。その温室効果ガスの削減量は、CO2換算で年間約50tにも及ぶ。ここでは、業界に先駆けて脱炭素への挑戦を掲げるイーストウエストの取り組みを紹介する。
同社では、2005年に国際規格・ISO14001(環境マネジメントシステム)を取得。その企業活動で培われたノウハウを生かし、2020年からはSDGsへの貢献に向けた事業展開を推進している。
SDGsの推進にあたっては、サスティナビリティを追求する上で、次のように3つの大きな目標を掲げている。
- 温室効果ガスの排出による影響の低減
- 石油資源の消費および廃プラの削減
- 環境汚染や健康被害が懸念される有害物質の使用低減
これらを達成するため、環境負荷の低いメディアやインクを選定し、積極的に顧客への提案を重ねてきた。併せて、従来のオンデマンドプリントに加え、CGやデジタルサイネージの有効性を訴求。環境負荷の低減にとどまらず、PR効果の向上という相乗効果も生んでいる。
そして同社は、今回の「100%再生可能エネルギー」への転換によって、さらにダイレクトに脱炭素へ取り組んでいく。実際に供給される電力は「RE100プロジェクト※1」の規格に準拠した「再エネ利用率100%」の環境価値を備えたものだ。
この取り組みは、電力小売会社・UPDATER(旧みんな電力)の協力で可能としている。発電事業側と需要側の情報は、UPDATERのブロックチェーンシステムによるトラッキング技術で30分ごとにマッチング。これにより、トレーサビリティ付きの再エネ電力取引を実現した。
昨今、業界内でも環境配慮型のプリンターやメディアを積極採用する企業は多くなりつつあるものの、出力工場の使用電力を「100%再生可能エネルギー」に転換しているケースは極めて少ない。エンドユーザーからは、「CO2を100%削減(CO2排出係数ゼロに)した工場で生産している」ことに驚きの声が挙がるほどだ。
これにより、環境意識の高い企業であればあるほど、同社に対する信頼は大きく増す。海外展開する化粧品やアパレルブランドを主要顧客とするため、その投資に対する効果は決して小さくないとうかがえる。
同社ではこの取り組みにより、環境配慮素材にCO2排出ゼロでプリントすることが可能になるため、顧客のブランドイメージ向上に役立つサービスを提供できるとしている。担当者は「これから業界の将来を考えた際、受発注する両者ともにサスティナブルに対する意識を強く持ち、そういった空気を市場全体に浸透させていくことが大切ではないでしょうか」と話す。
今後は、東京・目黒の本社で使用する電力についても、カーボン・オフセットの導入を視野に入れる。「いつの時代も、会社の付加価値を高めるためには、マーケットの先端を見極めていく姿勢が肝要だと考えています。エンドユーザーからも環境への配慮を求められるなか、その声に応えられる企業であり続けたい、このような思いから自社工場の稼働電力を100%再生可能エネルギーに転換したのです」(取締役社長・栄 正実 氏)
※1 事業で使う電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す世界的な企業連合