長年にわたり、若手不足に悩まされているサイン業界。そんななかで頑張っている、ひかり輝くルーキーを紹介していくのが本企画です。新連載となる今回は、サイン製作施工、内装全般を手がける、日本回線システムの中村朋子さん(26)に取材させていただきました。こちらの会社は、CNCルーターやCO2レーザー加工機を活用した高度な切削技術によるLEDチャンネル文字をはじめ、インクジェット出力や現場取り付けまで幅広く手がけています。社員は12人中8人が女性です。社員同士思いやりがあり、助け合いの精神を大切にしています。部署間の連携や明るい雰囲気の仕事場など、たくさんの楽しいお話を伺いました。 |
——中村さんのお仕事内容について詳しく教えてください
中村さん:今は製作部門でCNCルーターのオペレーターをしています。ルーターでアクリルやPVC、ABS樹脂、カルプ、木材などを扱い、厚みのある切り文字を製作。主に店舗ファサードを飾るサインとして利用いただいています。
——1日の流れを教えてください
中村さん:お客様から貰ったAIデータを製作部署で受け取り、DXF形式で書き出し保存をした後、type3というソフトを使って、ルーターで切削できるデータに書き換えます。この作業のなかで、使うきりの種類や深さ、切り方、内外の形状など細かい設定をしたのち、ルーターで加工していくのが主な業務です。このほか、アルミ樹脂複合板にインクジェットメディアを貼るなど、他部署のお手伝いもします。
——これまで具体的にどのような作品を作られましたか?
中村さん:PVC素材のなかでも、厚みのあるH30㎜の切り文字をよく加工しています。後は、PVCとアクリルを組み合わせたLEDチャンネル文字を作るケースも多いですね。ベースとフェイスをPVCで製作。フェイスはアクリルがはまる開口部を作り、そのなかにLEDを配置させるんです。どれも、社名サインや飲食店の路面店サインが多いです。
いつも大変に感じているのは、数の多いものや形状が複雑なものに取りかかる時です。印象的だったのは、ネオン風のサインにしてくださいという注文でした。皆でアイデアを出し合い試行錯誤の末、要望通りのサインができ、皆で喜び合ったのを良く覚えています。もちろん失敗もありますが、徹夜明けで作業したり、へとへとになりながら作ったものを最終的に見ると、嬉しいしやりがいを感じます。出来上がった看板を見に行った際は心の中で笑ってしまいました。うふふ、これ私が作ったんだぞ、って(笑)。
——そもそもどういったきっかけでこのお仕事に就かれたのですか?
中村さん:ものづくりに携わりたいと強く思ったのがきっかけです。実は私、歯科衛生士の専門学校を卒業後、1年ほど福岡の歯医者さんで働いていたんですね。でも、その仕事が自分に合わないと感じていて……。その矢先、テレビで武蔵野美術大学の特集を見て美術系の学校を知りました。すごく面白そうで、どこかのタイミングでお金を貯めて学校に行ってやろうと決意しました(笑)。それで仕事を辞めて東京に出てきたんです。高校生の頃から美術部に入って絵を描いたり、ものづくり系に興味はあったのですが、まったく新しいものに挑戦したいと思い、武蔵野美術学園では思い切って彫刻を専攻しました。それで卒業した後、ご縁あってこの会社を見つけたんです。
——学校勉強と実際の現場作業。働き始めてからのギャップはありましたか?
中村さん:学校にいた時に彫刻を学んだおかげで、立体の感覚が掴みやすかったため、ルーターの扱いはすぐに慣れました。三次元でものを考えられるような頭になっていたから、そこは入りやすかったですね。でもデザイン面は苦労しました。知識のないままだったので、先輩に教えてもらわないと何もできない状態でしたね。今でも失敗はするものの一発で想定通りの型がとれると自身の成長を感じます。インクジェットの出力を専門でやっている先輩やシート貼りを得意とする先輩が自分では全然思いつかない知識を持っていたり、なるほどなと思わせられるような技術、やり方をしているのを見るとすごいなと思います。1日も早く追いつけるように、これからも看板の知識を取り入れて、もっともっと成長したいと思っています。今の仕事は楽しいですし、自分に合っていると感じますね。
——ありがとうございます。せっかくなので、先輩社員さんにも、お話を伺っていきましょう。中村さんへの印象はいかがですか?
先輩社員の増子さん(写真):当時私は面接を担当したのですが、男性をメーンに募集している面接で小柄の女の子がいらっしゃったので、大丈夫かなという印象でした。話しているうちに、静かだけれど奥に情熱を秘めているように感じて、この子なら大丈夫だというように感じましたね。彼女が担当している機械は最新機種で、ウチも導入したばかりで、教える先輩も慣れていなかったので大変でしたけれども、そういった状況でどうすればうまく動かせるか試行錯誤して追及していく姿勢というのは、彼女は飛びぬけていました。現在、同じ部署の先輩が産休で休みを取っているため、彼女一人で先頭に立って指示を出してくれています。たった2年の間にこれだけ成長するのはすごいです。
増子さん:担当してもらっている機械が使い方によっては新しいものを生み出せるものなので、ビジネスの幅をもっと広げてくれる可能性を持っていると思います。そういった面は彼女にさらに任せていきたいと思っています。また、会社の将来に対する問題意識を持ってくれているのも心強いですね。コロナの影響でリモートワークが全国で推進された時、我が社にも取り入れるべきという声を最初にあげたのも彼女でした。今後も積極性を忘れず、将来的には会社を動かす重要な一員となってもらいたいと思っています。楽しく長くウチで働いて欲しいですね。
——ありがとうございました。